絶体絶命の大塚家具!の話

家具

大塚家具の経営危機

2014年に親子間で大揉めに揉めていた大塚家具が経営危機に立たされています。2018年8月7日夜に2018年12月期の業績予想を13億円の黒字予想から34億円の赤字予想へと下方修正しました。
身売りの噂も出ていますが買収先が見つからず、有力な交渉先と見られていたヨドバシカメラは買収を否定、今のところ身売り先候補はTKP社だけになっています。
大塚久美子氏が経営を悪化させた原因との記事が多く、大塚勝久氏と協力していれば良かったとの記事もありますが本当に大塚久美子氏が経営を悪化させたのでしょうか。

大塚家具の業績

大塚家具創業は1969年です。売上情報を入手できた1993年以降の売上高と営業利益を調べてみました。
大塚家具の売上高と営業利益グラフ
1993年に200億だった売上高は2001年は700億円を超え、その後2008年まで700億円程度の売上高で推移していました。その後2009年からは600億円を割り、親子騒動が起きた2014年、その翌年の2015年まで500億円くらいの売上高で推移していました。
その後2016年から売上高が500億円弱へと急減、2017年は400億円くらいまでさらに減り、2018年は456億円と回復の業績予想を出していましたが8月7日に2018年の売上予想を376億円へと下方修正しました。
ニュースになっている人達は大手しか知らなかったり難しい経済学や机上のなんたらが得意な優秀な人達の見解です。合っているのか合っていないのかは私にはよくわかりません。
私は難しい経済学や机上のなんたらの知識は乏しいですが、零細中小企業のど真ん中で実際の倒産案件や夜逃げ案件(夜逃げを手伝ったりはしてませんよw)に関わってきました。その経験を元にして書くのでちょっと違う視点や考え方を元に書きます。
いろいろな人が書いた後の後だしジャンケン的な感じになってしまいましたが、2017年までの業績悪化と2018年度の壊滅的な業績悪化の2つに分けて書いてみます。

大塚久美子氏が業績を悪化させたのか

大塚久美子氏が社長に就任したのが2015年だと思っている人が多いと思うので最初に社長交代の年月日を書きます。
2009年3月に大塚勝久社長を退任し、大塚久美子氏が社長に就任しました。2014年7月に大塚久美子氏が社長職を解任され大塚勝久氏が再び社長に就任しました。2015年1月に大塚久美子氏が再び社長に就任。
売上高の推移だけを見ると大塚久美子氏が経営を始めた直後の2009年から売上高が急減しています。
大塚家具の営業利益グラフ
これは営業利益のグラフです。営業利益を見ると2007年までは減少傾向ながらも順調に推移していましたが2008年に急減、その後は赤字になる年もあり、黒字の年もほぼプラスマイナス0に近い状態で業績的には低空飛行が続いていました。2008年の時点で大塚家具は終わりかかっていたのです。

2008年がターニングポイント

会社情報を見るとショールーム開設状況が書いてあります。
大塚家具の会社情報
2008年が1つのターニングポイントだったのでしょう。2008年は珍しくショールームを1件も開設していません。2008年は売上は前年と比べて微減でしたが営業利益が激減した年です。内部の人にしかわからない何かがあったはずです。その影響でショールームを開設できなかったか、開設せずに様子見をするという判断をしたのだと思います。

2009年3月に大塚久美子氏が社長に就任

2008年に何かがあったからこその社長交代だったのでしょう。2008年は0だったショールーム開設、2009年以降はペースは少ないながらもショールームを増やしていきました。まだ売上も利益も増やせると思っていたのでしょう。
会社発表の資料を見ると2009年以降も人件費はほとんど変わっておらず、賃借料もショールームを閉鎖していないのでほぼ変わらずです。
変わったのは2007年まで330億円程度で推移していた販売費及び一般管理費の総額(経費)が2009年以降は300億円程度に1割程度減ったこと。50億程度だった広告費が30億円程度になったことです。30億円減った経費の理由は広告費を少なくしただけ。広告費を大幅に削減するというのが大塚久美子氏の経営方針でした。
高級家具店でありながらも気軽にお店に入れる雰囲気作りや客に付いて回る接客方法を控えるなどの方針を取ることで入店者数を増加させることには成功しましたが、2009年以降も売上は回復することなく利益も低調な状態が続きました。

2009年から2014年までの経営方針

この時の大塚久美子氏の経営方針も今と同じで「高級店なのに気軽に入れるお店」というものでした。一見美味しいとこ取りのようでありますが、気軽に店に入ってくる人が高い家具を買うのかどうかという部分に非常に疑問を感じる方針でした。
完全に後だしジャンケンですが、この方針で業績を急速に悪化させることはありませんでしたが5年間の社長就任期間中に業績を維持するのが精一杯で回復させることができなかったということはこの方針が失敗だったからです。
2009年以降は売上高だけを見ると大きな問題はないように見えますが、影響利益を見るとガタガタで危ない状況でした。このような状況で5年も同じ方針を引っ張るというは究極の判断ミスだったと思います。
2014年7月に大塚久美子氏は社長職を解任され、2015年1月に社長職に復帰しました。

2015年大塚久美子氏復帰後

復帰した2015年の決算は悪い状態ではありませんでしたが、2016年以降は5年間の社長時代に成果があまり出なかった経営方針をさらに進めたことで売上高が激減して営業損失が激増しました。今だから言えることですが過去5年間の経営方針は間違いであり、復帰後の経営方針も残念ながら正しくなかったということです。
これも今だからこそ後出しで言えることですが、2009年以降大きな赤字にならなかったことが不思議な出来事だったような気がします。2016年以降続いている大きな赤字状態というのが今の経営方針に対する正しい答えだと思います。
2009年以降、しばらく大きな赤字が出なかったことはとても不幸なことだったのだと思います。

今年度の致命的な状況

2018年度、業績下方修正を発表した今季は致命的な状況に陥ってます。根拠のない非常に楽観的な見通しに対して、結果は非常に当たり前の結果となっています。
営業利益の推移
2018年のポイント
2017年12月期決算説明資料ではこのように楽観的なことが書かれています。
前年同月比売上高
しかし2018年度の売上高推移は壊滅的な推移を続けてします。2017年10月以降の売上高の推移は壊滅的です。2017年10月以降、2018年1月までの売上高の推移を見ての2017年12月期の決算説明資料。悪意があったのでは?と疑いたくなるレベルです。
2018年の前年同月比の売上高の推移を見るとThe Endを予想させてしまいます。買収先がないのも納得の内容。候補先が1社残っていることが不思議な状況です。

どう経営すれば良かったのか

これはいっぱい記事やブログで有名な人が書かれているので特に書くことはありませんが、あえて書くとすればどっちに進んでもダメそうとわかったらやめてしまうのが一番だと思います。
従業員や取引先のことを考えるといきなりやめるわけにはいきませんが、今後の経営継続が無理そうとわかった時点で計画的に終わらせる方向で考えるのも1つの手段だと思います。上場企業としては前例がないと思いますが、大塚家具のように業態を変えても先々ダメになってしまいそうな会社は余裕があるうちに一旦会社を終わらせてしまうのがベストだと思います。
何もかもが後だしジャンケンの意見であり、今さらどうすることもできませんが大塚勝久氏が経営しても大きな差はなかったと思います。今時高価な高級家具は・・・このことについては沢山の人が書いているので私はやめておきます。
現預金が激減していることや当期利益を確保するために売れる物は売り尽くしたい感じで固定資産もピークの3分の1程度である110億円程度まで減少しています。そろそろ売れるものがなくなっていると思われます。
8月7日の業績予想の下方修正時に発表された棚卸試算評価損10億円もかなり気になる処理と発表です。経営困難な状況時に個々に在庫の評価をするという呑気なことをすることは普通はないと思います。本当に個々の在庫の質を見直したとするならば、それは何かしらの意図や意味が絶対にあるはずです。数量間違いの修正だった可能性が高いと思われますが、そこまではきっと発表されないのでしょうね。数量間違いだった場合は粉飾の疑いありということです。
8月14日の2018年1月から6月までの半期決算発表が予定されています。今後の発表と報道には要注目です。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。