お得な簡易課税制度を取りやめた方がいい人!の話

税金
昨日書いた、消費税の簡易課税制度というお得な制度。非常にお得ではありますが大きな損をしてしまう落とし穴もあります。

簡易課税制度を税務署に支払う消費税額の計算式が売上金額(課税売上高)にかかる消費税に業種ごとの料率掛けて計算することになっています。

消費税額は売上高に比例するので費用が多くても少なくても消費税の支払い額は変わりません。通常の営業であれば費用は売上高の増減に連動することが多いので、簡易課税制度を選択していても特に問題になることはありません。

簡易課税制度を選択していて損をする場合

設備投資が多かったり居住用でない建物の取得をした年など、消費税に関係する費用の支払いが多い年は売上金額(課税売上高)だけで消費税額を計算する簡易課税制度の方が税額が多くなってしまう可能性があります。

簡易課税制度を選択できる事業者は会社であっても個人事業主であっても年間売上金額(課税売上金額)が5千万円以内の事業者です。

あまり規模が大きくない事業者しか選択できない制度なので、極端に多額の設備投資をする可能性は低いと思いますが、数百万円の車を買っただけで簡易課税の方が納税額が多くなってしまうこともあるので、車を買う予定がある場合も簡易課税制度継続の場合と普通の制度に戻した場合の試算をするべきです。

簡易課税制度をやめる場合、個人事業主であればやめたい年の前日までに、会社であればやめたい期がスタートする前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を税務署に提出する必要があります。
消費税簡易課税制度選択不適用届出手続

個人事業主の場合は12月31日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を税務署に提出するか、12月31日までの消印が押された郵便で税務署に郵送する必要があります。12月31日までに届出書を提出することで翌年から簡易課税ではない普通の課税方式に切り替わります。

12月決算の会社の場合は11月30日までに届出書を税務署に提出する必要があります。11月30日までに提出すると翌期である12月1日から簡易課税ではない普通の課税方式に切り替わります。

不動産購入予定時は絶対に簡易課税は損

数百万円の車や1千万円程度の設備投資の場合であっても簡易課税制度をやめておかないと損をしてしまいますが、一番損が大きくなるのは不動産取得時だと思います。

事業者向けのテナントビルや工場の建設や大規模修繕などが翌年、翌期に控えている場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することで支払う税額が少なくなったり、還付されることになります。

居住用の賃貸アパートやマンションの場合は非常に複雑な仕組みで消費税の還付を受けるという手法が難しくなっています。自販機を使った手法が封じられてしまいましたが、金の取引を利用する手法は未だ健在です。この部分は主題とは別の話になるので興味がある人はググってみてください。

簡易課税をやめても翌年から簡易課税を選択できる

簡易課税を選択した場合は2年間継続する必要がありますが、簡易課税をやめた場合は1年間だけ通常の方法で消費税の計算をして、その年の間に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで翌年からまた簡易課税制度を選択することができます。

簡易課税制度を選択

今まで簡易課税を選択していなかった人は簡易課税制度を選択した方が得をするかどうかの試算をしてみるべきです。

簡易課税制度を選択できるのは年間売上金額(課税売上金額)が5千万円以下の事業者です。この判定は当年分ではなく2年前、2期前の売上金額で判定をします。

今年2018年に簡易課税制度を利用できたかどうかの判定は2016年の売上金額(課税売上金額)が5千万円以下だったかどうかで判定されます。

来年2019年に簡易課税制度を利用できるかどうかの判定は2017年の売上金額(課税売上金額)が5千万円以下だったかどうかで判定します。

2017年の売上金額(課税売上金額)が1千万円を超えている人は来年2019年は消費税を納める必要のある人(課税事業者)です。2017年の売上金額(課税売上金額)が1千万円以上であり5千万円以下の人は簡易課税の選択をした方が得をする可能性が非常に高いです。

簡易課税制度とは売上にかかる消費税額に一定の率を掛けることで消費税の額を決める制度です。
一定の率は業種ごとに決められています。卸売業など利益率が低い業種は率が低く、不動産業など利益率が高い業種は高くなっています。主な業種区分は下記の通りです。
・卸売業 10%
・小売業 20%
・製造業 30%
・その他の業種 40%
・サービス業 50%
・不動産業 60%

消費税簡易課税というコッソリ得する制度がある!の話

2019年に簡易課税制度を選択する場合は今年の12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出する必要があります。

会計事務所の賠償案件は消費税関係の届出書提出の失念と判断ミスが圧倒的に一番多い状態が続いています。

年末近くになるとバタバタとして忘れてしまうことが多いので、12月中旬までに試算を済ませて必要な届出書は提出しておきましょう。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。