消費税が10%になった時の軽減税率の話がテレビなどワイドショーで話題になっていますが、現在も軽減税率ではありませんが簡易課税という一般の人があまり知らないと思われるインチキっぽい制度があります。
普通の消費税の計算方法
基本的に会社はもらった消費税から払った消費税を引いて、差額を税務署に払います。税込で1億800万円の売上があり、税込で6,480万円の費用があった場合は売上に対する消費税800万円から費用にかかる480万円の消費税を引いた320万円を税務署に払うことになります。
消費税の簡易課税制度とは
これに対して簡易課税制度というのは売上にかかる消費税額に一定の率を掛けることで支払う消費税の額を決める制度です。一定の率は業種ごとに決められています。卸売業など利益率が低い業種は率が低く、不動産業など利益率が高い業種は高くなっています。主な業種区分は下記の通りです。
・卸売業 10%
・小売業 20%
・製造業 30%
・その他の業種 40%
・サービス業 50%
・不動産業 60%
簡易課税制度を使った消費税の計算
例えば税込売上が5,400万円あった場合、売上にかかる消費税額は400万円です。卸売業の場合はこの400万円に10%を掛けた40万円、製造業の場合は30%を掛けた120万円、不動産業の場合は60%を掛けた240万円の消費税を支払うことになります。
業態によりますが簡易課税制度を使った方が支払う消費税額が少なくなることが多く、消費者が払った消費税が税当局に届かずに会社の利益になってしまっています。これが俗に言う益税というやつです。
会社が消費税の差額で儲かってしまう簡易課税制度、この制度で申告をできる制度が年間売上金額(課税売上金額)が5千万円以下の会社に限られています。規模も小さな会社だけが恩恵を受けることができる制度なのです。
業種区分の難しさ
軽減税率でも議論されている持ち帰りか店内で食べるかで率が変わるという区分の難しさとおかしさ、簡易課税制度の業種区分でも沢山あります。軽減税率より簡易課税の業種区分の方がおかしな話が多いです。卸売業と小売業の区分は売る相手が事業者か消費者かで区分します。肉屋を経営していた場合、飲食店経営者に売った分は卸売り業になり、自宅用に買っていく人に売った分は小売業になります。
ひき肉を仕入れて、ひき肉のまま売った場合は卸売業か小売業のどちらかになります。しかし肉を挽いてひき肉を売った場合は肉を加工して売ることになるので売った相手が飲食店でも一般客であっても製造業と同じ業種区分になります。
仕入れた物の形状を変えず、手を加えずにそのまま売る場合は卸売業か小売業になりますが、ひき肉にしたりコロッケにしたりして売ると製造業と同じ区分になり、支払う消費税額が多くなってしまうのです。
軽減税率問題と似た問題
簡易課税制度の業種区分にも軽減税率と似た問題があります。軽減税率よりもさらに複雑な問題があるのです。ハンバーガーなどを売っているファーストフードの場合、持ち帰りやドライブスルーで販売する場合は仕入れた食材を加工して販売する業者になるので製造業と同じ売上消費税に対して30%を掛ける業種区分になります。
店内で食べて行く人に売った場合は飲食店ということになるので、その他の業種と同じ売上消費税に対して40%を掛ける業種区分になります。
この区分は軽減税率で議論されていることと全く同じですよね。
コンビニの場合はもっと複雑
カップラーメンやスナック菓子などの食べ物を売った場合は卸売り業か小売業に区分されます。おにぎりやパンを売った場合、おにぎりやパンを仕入れて売った場合はやはり卸売業か小売業に区分され、イートインコーナーで食べる場合は飲食店であるその他の業種に区分され、お店で作ったおにぎりやパンを持ち帰りで売った場合は製造業と同じ業種に区分されます。
軽減税率の場合は10%か8%のどちらか2つの区分ですが、コンビニが簡易課税制度を利用している場合は卸売業、小売業、製造業、その他の業種の4つに区分する必要があります。
面倒でおかしな簡易課税制度、会社に消費税差額の利益が出てしまう簡易課税制度、おかしな制度にもかかわらず廃止されることなく長年継続中です。業種区分や率の改正は何度も行われていますが、3%の消費税が導入された時から継続中なのです。
どうしょうもない軽減税率のことを報道するよりも、益税が発生し続けている簡易課税のことを報道した方が有益なのではないでしょうか。
本当に税収が必要であるならば、軽減税率や簡易課税や免税制度など税収が少なくなる制度はやめて、シンプルにしっかりと徴収して有意義に使ってもらいたいです。
何もかもが中途半端で無駄なことが多いのでもったいないです。