前回に続き、今年も残り1ヶ月半程度になってしまった今から税金を減らす方法を書きます。脱税ではなく節税です。
前回の家賃の話は利益を先に繰り延べるだけで、長期間で考えるとあまり節税にならない方法でしたが、今回は上手く使えばちゃんとした節税になります。
小規模企業共済
個人事業主と会社役員のための退職金積立基金です。最高で月額7万円、年払いをすることで84万円の退職金を積み立てることができます。
11月中旬である今からでも現金払いをすることで年払いの手続きが間に合います。支払った84万円は全額所得控除の対象になります。
全額所得控除の対象になるということは、個人事業主にとっては支払った金額全てが費用になるのと同じことを意味します。
年払いのデメリット
今から小規模企業共済の年払いを申し込み、12月に84万円を支払った場合の内容は今年の1月分から12月分ではなく、今年12月分から来年の11月分ということになります。
前回書いた家賃と同じで、年払いから月払いに戻した年は1ヶ月分しか控除(費用に)することができなくなります。
年払いと月払いの関係は項目や内容がどのようなものであっても、全てが費用の先食い、利益の繰り延べ行為なのです。
小規模企業共済加入のメリット
退職金目的の積立金であるので、個人事業を廃業をした時に積み立てた金額に利息が付き、退職金として支給されることになります。
支払った積立金は全額控除の対象となり(全額費用になるということです)、廃業時に退職金をもらう時は退職金所得という特別な収入区分になるので、収入に対する税率が低く、税額がかなり安くなります。
支払額と入金額
月額1万円を20年間掛け続けて廃業をした場合、払込金額は1万円×12ヶ月×20年=240万年になります。
毎年12万円支払うことで最低でも所得税5%と住民税10%である1.8万円税額が安くなります。
20年で1.8万円×20年=36万円税額が安くなります。
所得税率が10%の人は年間2.4万円、20年で48万円税額が安くなり、所得税率20%の人は年間3.6万円、20年で72万円安くなります。
払込金額240万円に対して廃業時の退職金支給額は2,786,400円です。
約280万円の退職金所得としての収入になります。
退職金控除は1年につき40万円、20年掛金を支払うということは20年以上個人事業をしているということなので、退職金控除の金額は最低でも40万円×20年=800万円以上。
退職金所得の収入280万円より退職金控除の金額の方が多くなるので、280万円は無税で受け取ることができます。
支払った時に所得税と住民税が安くなり、掛金の戻りの時には1円も税金を払わずに利息付きの退職金全額を受け取ることができます。
このようなやり方が本当の節税なのです。
利益と税金の支払いを先延ばしにするだけの行為は節税とは言わないのです。
月額3万円の掛金を20年間支払って廃業をした場合、3万円×12ヶ月×20年=720万円の払込金額になり、約840万円の退職金を受け取ることになります。
個人事業主としての21年以上仕事をしてからの廃業であれば、840万円の退職金を無税で受け取ることができます。
満額である月額7万円を20年間支払った場合
7万円×12ヶ月=84万円。1年間に84万円の所得控除(費用)が増えることで所得税と住民税が安くなる金額は下記の通りです。
面倒なので復興特別所得税(所得税額の2.1%)は含まない金額です。
・所得税率5% 12.6万円
・所得税率10% 16.8万円
・所得税率20% 25.2万円
・所得税率23% 27.7万円
・所得税率33% 36.1万円
・所得税率40% 42万円
・所得税率45% 46.2万円
高所得者ほど税率が高くなるので節税額が大きくなります。
退職金支給時の税額
月額7万円の20年間支払った場合の支払総額は7万円×12ヶ月×20年=1,680万円です。
払込金額1,680万円に対して廃業時の退職金支給額は1,950万円です。
払込金額よりも受取金額が270万円くらい多くなります。
20年間個人事業をして、1,980万円の退職金を受け取った時の税額は約135万円です。
税率5%だった場合であっても20年間で12.6万円×20年=252万円減ります。
20年間で252万円の税金が減り、20年後に利息270万円付きである1,960万円を受け取り、その受け取った金額に対しての税金は135万円。
差引252万円-135万円=117万円の税額が減り、利息が付き受取金額が増えます。
税率が高ければ高い人ほど得をする金額が多くなります。
年払いで今年の税額を安くするという小さな話ではなく、自分の退職金の準備をすることでかなりの節税になるのです。
個人事業主として一生仕事をする場合には上記のような感じで、特に問題なく節税をすることができます。
今は個人事業主として仕事をしていて、そのうちに自分で会社を設立して社長になった場合、この小規模共済掛金は掛金納付月数を引き継ぐことができます。
個人事業主として小規模共済掛金を5年支払い、会社を設立して社長になり継続して小規模共済掛金を20年間支払った場合は25年分の共済金を受け取ることができます。
会社を設立した場合には注意すべき点があります。
上記のように5年間個人事業主として支払い、その後会社設立をして20年間支払うことで25年分の共済金を受け取ることができますが、所得税と住民税を計算する時の退職金控除は会社設立後の20年分だけになってしまうこと。
その他にも退職金をもらえる条件が細かく分かれており、良い条件で共済金を受け取るのは難しい状況になっています。
昔はこんなにややこしくなかったのですが、現在は区分が沢山に分かれて条件も厳しくなってきています。
共済金(解約手当金)について
条件は厳しくなっていますが、それでも単純な利益の繰り延べではなく、先々収益が発生した時のことも含めてお得な制度になっています。
とりあえず今年の税額を抑えることが目的であれば急いで年払い手続きを、そのような目的がなくてもお金に余裕がある人は月額1万円程度からスタートしてみることをオススメします。
家賃年払いから月払いに戻した時
前回書いた家賃を年払いすることで費用を大きく増やせるという話。
家賃の年払いをすることでの節税!の話
年払いから月払いに戻した時の税負担を軽くする方法として小規模共済掛金の年払いを使うという方法もありますが、家賃と小規模共済掛金を比べると家賃の金額の方が圧倒的に高額である可能性があり、利益を吸収することができません。
小規模共済掛金を年払いにすることで、小規模共済掛金を月払いに戻した時のことも考える必要が出てきます。
年払い費用の後処理を別の年払いだけでカバーするのは無理があります。
近いうちにこの年払い地獄からの脱出方法を書きます。