会社契約の生命保険の選び方!の話

生命保険
以前に会社が役員にかける生命保険の話、退職金を目的とした生命保険の話を書きました。
会社が役員にかける保険の内容はどんな感じにするべきか?の話

今回はさらに具体的な話を書きます。

必要な生命保険の種類

死亡保険金と三大疾病保障保険が必要です。

死亡保険金のターゲットは借入金残高とリース残高、クレジット残高の総額。

三大疾病保障保険は毎月の固定費の3ヶ月分。

理想は毎月の固定費の6ヶ月分なので利益と資金繰りに余裕があれば6ヶ月分の保険に入るのが良いです。

極端な余裕がない場合は、保険料が高いことを考えると毎月の固定費の3ヶ月分で十分です。

その代わり社長が三大疾病にかかってしまった時は3ヶ月程度で会社を終わらせる準備と覚悟を決めておく必要があります。

死亡保険金の決め方

今後の会社経営方針が縮小方向であるならば、現在の借入金、リース、クレジット残高の合計額で十分です。

死亡保険金は会社の利益になるので40%程度の税金がかかります。

社長が亡くなった時に借入残高等が減っていないと税金分だけお金が足りなくなってしまいます。

保険契約時の借入等の残高合計額が1億円あり、死亡保険金1億円で保険契約をして、社長が亡くなった時の借入等の残高合計額が1億円合った場合。

1億円の保険金額に対して40%の法人税等の税金がかかるので4千万円の税金を支払うことになります。

1億円の保険金収入に対して4千万円の税金。手元に残るお金は6千万円。保険金だけで借入金等を全て返すことができない状態です。

この状態はかなり困ってしまう状況ではありますが、全てを一括返済する必要がない場合が多いこと、預金等で支払えば済むだけであること、会社規模縮小方向で経営している場合は借入金も含めて規模が縮小する可能性が高いので大きな問題になることは少ないです。

万全の死亡保険金の決め方

経営方針が縮小方向でない場合は税金のことを考えると借入金等の残高だけでは不安になると思います。

将来の借入等の残高を予想することは難しいので現在の借入等の残高を税金を支払っても返済できる死亡保険金額で契約することをオススメします。

法人税等の税率は約40%なので借入等の残高を0.6で割ってください。

残高が1億円の場合は0.6で割ると1億6666万円、死亡保険金1億7千万円の保険がターゲットとなります。この金額を中心に少し上げるか下げるかは人それぞれの好みです。

1億7千万円の保険収入に対する法人税等の税額は40%の6,800万円。

税金を支払っても1億200万円が残り、1億円の借入金を全額一括返済することができます。

死亡保険金の種類

一生涯保障が続く終身保険は1円も費用にすることができないので今回の試算からは除外します。

解約返戻金のない保険と解約返戻金のある保険、いわゆる解約返戻金を退職金目的とする保険とで保険料を比べてみました。

私が46歳なので46歳加入の66歳までの20年契約で試算をしてみました。死亡保険金は1億円での試算です。

保険金額が高いほど高額割り引きがあるので単純にイコールにはなりませんが、5千万円の場合を知りたければ単純に50%を掛けた金額、3千万円の場合を知りたければ30%を掛けた金額と考えて問題ありません。

半分損金の保険は20年後である66歳時に解約して解約返戻金を得た場合の試算です。
・全額掛捨(解約時の戻り金0円) 42,000円/月額
・半分損金(65歳解約時に8割戻る保険、退職金目当ての保険) 240,000円/月額

20年間の実質負担額の比較
1 全額掛捨 42,000円×12ヶ月×20年=1,008万円
2 半分損金(65歳解約時に8割戻る保険、退職金目当ての保険) 24万円×12ヶ月×20年=5,760万円
解約返戻金 5,760万円×82%=4,723万円
差引保険料 5,760万円-4,723万円=1,037万円

実質負担額はほぼ同じなのです。

これは死亡保険金の金額を問わず同じなのです。

退職金目的の保険のメリットとデメリット

退職金目的保険のメリット

解約返戻金が多く、支払った保険金の半分だけが費用になる退職金目的と言われる保険のメリットは利益の繰り延べだけです。

利益を繰り延べても解約返戻金受け取り時の役員への退職金支払いなど、利益を繰り延べた後の具体的な利益処理計画がない状態であるならば、利益を繰り延べることのメリットはありません。
退職金はいくらまで会社の費用にすることができるのか?の話

解約返戻金を受け取る時は今と税制が変わっている可能性が非常に高いです。

退職金支払いなど、具体的に安い税率でお金を動かせる何かしらの事象が確定していない場合は将来の税制次第、運まかせになってしまいます。

退職金目的保険のデメリット

支払った保険料の半分しか費用にできないことから資金繰りが大きく悪化します。

先に書いたように解約返戻金との差し引きで考えても保険料は安くありません。

解約返戻金がない保険は損との説明をする保険外交員の人が多いです。

目的が明確であれば解約返戻金のない保険は資金繰りを圧迫せずに目的である保障を得ることができるので一番会社に適している保険なのです。

利益を繰り延べることのできる保険もしっかりと計画をして計画通りに実行することができれば大きな節税になります。

しかし資金繰りを大きく悪化させることもあり、リーマンショックや震災などの予期しない出来事が起きてしまうと全てがはじけてしまいます。

20年の間には何かしらの大きな災害や事件などのトラブルがあり、資金繰りが逼迫してしまう時があります。計画通りに無事な20年などあるわけがないのです。

ということも踏まえて考えると、退職金目的とした保険は大きな金額や大きな割合にするべきでなく、道楽的な考え方で入るべきです。運次第ではありますが得することはありません。

創業者である社長に対する退職金対策のことについては後日別投稿で書きます。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。