持ち家を会社に貸すことで節税できるのか?の話


今回もまた山田さん、箕輪さん、正田さんによる節税に関する対談サイトに書かれている内容をネタにさせてもらいます。
箕輪編集室を株式会社に!税金の悩みを解決する節税チーム誕生!?

あとは経費かな。今住んでいる家の家賃半分を経費にしたいとかそういうのあります?
ああ、そういう細かいのはいっぱいあるね。
家賃の半分とかなら何も言わないですよ。

対談サイトで書かれていたことは上記のように賃貸物件のことだけです。賃貸物件に関しては前回書きました。
自宅家賃を費用にすることで節税できるのか?の話

対談には持ち家だった場合のことは何も書かれていませんが、持ち家の場合はどうなるのかを今回書きます。

自宅が賃貸ではなく持ち家の場合

仕事で自宅の一部を使っている場合は持ち家であっても費用計上できますが、この場合は会社と個人事業主とでは計算方法が大きく異なります。

個人事業主の場合は嫁や家族への給料の件も合わせて別投稿で書きます。

家賃の算出方法

会社の場合は自宅の持ち主である個人(社長)が会社に自宅の一部を貸し付けることになり、会社が個人に家賃を支払うことで費用として処理をすることができます。

この場合の家賃の決め方は、まず自宅全体の賃貸相場を調べるところからスタートです。

近所の不動産屋など、専門家に確認するなどで自宅を賃貸物件にした場合の家賃月額を調べます。

仕事専用に使っている面積の比を計算して、家賃月額相場金額に仕事専用に使っている面積の比を掛けて月額家賃を算出します。

自宅を賃貸物件にした場合の家賃相場を調べるのは大変なので、1㎡あたりの賃貸相場単価に仕事専用に使っている面積を掛けて計算しても大丈夫です。どちらで計算してもほぼ同じ結果になるはずです。

合理的に算出した金額を会社が個人(社長)に家賃を支払う場合、会社は支払った家賃を問題なく費用として処理をすることができます。

家賃を受け取った個人の注意点

住宅取得控除額が少なくなる

住宅取得控除を受けている場合、会社に貸し付けている部分に対しては住宅所得控除を受けることができません。

3割を仕事専用として使っていて、家賃相当額の3割を会社から家賃として受け取っていた場合は住宅取得控除額が3割減ります。

5割を越えて仕事専用として使用していることにした場合、住宅取得控除の額は0円になってしまいます。

住宅取得控除の適用要件に「購入した自宅の半分以上を居住用として使っていること」という条件があります。

仕事用として5割超を使っていることになると、この要件からはずれてしまうので住宅取得控除を受けることができなくなります。

家賃収入に税金がかかってくる

家賃を受け取った個人(社長)は受け取った家賃が収入となり、利益に対して所得税や住民税が課税されることになります。

受け取った家賃は不動産所得という区分の所得になり、給与収入などと合わせて確定申告をする必要があります。

不動産所得の収入金額は受け取った家賃、費用にできるものとして考えられるものは下記の通り。
・借入金の利息
・固定資産税
・建物の減価償却費
・火災保険料・地震保険料
・共益費・管理費
・修繕費

それぞれの費用に家賃算出時に使用した仕事専用と使用している率を掛けて費用計上をして申告をします。

会社から家賃をもらう場合は青色申告を選択しておくことで10万円の青色申告特別控除を受けることができるので、早めに青色申告承認申請書を税務署に提出しましょう。

青色申告にすると税務調査がきやすくなるなど、おかしな噂がありますが青色申告承認申請書を提出することにデメリットは何もありません。

メリットは沢山ありますがデメリットは何もないので、何も考えずにまず青色申告承認申請書を提出しましょう。

節税になるのか?

ケースバイケースになります。ある程度収入が多い個人(社長)の場合は法人に対する税率よりも個人に対する税率の方が高くなっています。

個人の確定申告で費用にできる項目も金額も微々たるものなので、手間だけかかってあまり節税にならない可能性があります。

持ち家の一部を会社に貸して個人が家賃収入を得て、会社は家賃を費用とする処理は会社と個人両方足したところで税金がどの程度安くなるのかを確認してからするべきです。

ここまで長々と書きましたが、持ち家の一部を会社に貸し付けてもあまり節税と呼べる効果は得られないことが多いです。

次は会社が自社ビルを持つことの意味についてを書きます。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。