税務署の無料相談で確定申告をしている人は事業者と言えるのか?の話


フリーランスの人、個人事業主の人、マンションやアパートの不動産賃貸をしている人の中に確定申告は税務署でやるものだと本気で思っている人がいるようです。実際に沢山いるのです。

1つや2つの質問をするのは良いと思いますが、領収証や納品書や病院の診療明細書など何から何まで全ての書類を税務署に持ち込んで全て税務署の人に聞きながら申告書を作成する人達が列をなしています。


こんな感じのツイートをしたのですが、書きたいことがありすぎてツイッターでは書き切れないのでブログに書くことにしました。

確定申告を自分で処理しないこと、専門家にも依頼しないことやできないことの問題点と、それに気付かない人やわからない人は事業をすべきでない理由を書いていきます。

無料ほど高いものはない

これが結論です。税務署の人に聞きながら作る確定申告、間違いがなく完璧だとほぼ全員が思っているはずです。でも違うのです。

相談に乗ってくれる税務署の職員は聞いた話から想像で判断しています。そして質よりもスピード重視、後で文句を言われると困るので追徴課税されない方向で適当に返答しながら申告処理を進めていく。そうしないとあの人数をさばくことができません。

税額はかなり高くなる

収入とすべきものか、費用とすべきものかは税務署職員が決めるのではなく、相談者の話を聞いて職員が想像で判断していきます。時間と後で起きるトラブルを避けるために収入が多くなるように、費用は少なくなるように返答します。

税金を沢山取りたくてそうしているのではないのです。後で税務調査があり、追徴課税処分になった時に「税務署の言った通りに申告したのにどうして追加で税金を取られるんだ」と文句を言ってくる人が多いことが簡単に想像できます。

実は税務署職員の指導や言葉は絶対ではなく、かなり適当であり法的な権限は何もありません。返答通りに申告をするかどうかは相談者の自由であり、相談者が判断して決めることです。

このことを税務署に並んでいる人達に説明しても理解されるわけがなく、面倒なので税務調査があっても追徴課税される可能性が限りなく0に近くなるように返答をしながら申告書を作らせます。

それでも税務調査があった時に追徴課税される場合はあります。事業内容など、本来はしっかりとヒアリングをしないと判断できない部分を時間優先で適当に処理を進めているので間違いがない方がおかしいです。

このような理由から税額はかなり多めになります。所得税が多くなるということは連動して住民税や国民健康保険料も高くなります。

確定申告をする事業だけで食べていけるだけの稼ぎがある人の場合、税務署の無料相談で確定申告をすることで「所得税・住民税・事業税・国民健康保険料」の合計額が会計事務所に丸投げでお願いした時の金額を超えることが多いと思います。

税務署に書類を持ち込んで確定申告をするような人の中に国民健康保険料の試算をしたことがある人はほぼいないでしょう。所得税の金額が少なくても国民健康保険料の金額はかなり高額になることがあります。

これは横浜市の国民健康保険料試算サイトです。今年の確定申告が済んでいる人、これからの人も試算してみてください。所得税と比べるとビックリするくらいの金額が表示されると思います。
横浜市国民健康保険料試算サイト

このようにめいっぱい高めで税額の計算をされてしまうので、税務署に全部お任せの確定申告書を作成するべきではありません。無料だから得だと思っているのでしょうが、実は大損をしている可能性が高いです。

どのように確定申告をするべきか

専門家に有料で依頼をするか自分で学んで自分で申告をすかの2択しかありません。

税務署に並んで申告書を作ってもらう人は事業主として向いていないと思いますし、私はそのような人達を事業主だと思っていません。

趣味や遊びですよ。経営方針も儲けも税金のことも何も考えないでやりたいことをやっているだけ。好きなことを仕事に!なんて言葉がネット上には沢山ありますが、好きなことだけしかしない行為は趣味であり遊びです。

税金や申告の勉強をしろという話ではないのです。好きなことであり自分の得意なことであることで稼ぎ、申告については専門家に依頼するか自分でやるかの選択をするべきなのです。考えずに好きなことをしているだけというのは趣味であり遊びなのです。

自分で学んで確定申告をする場合

会計処理や税務処理が好きな人で時間に余裕がある人は自分でやるのが一番良いです。

どれくらい儲かっているのか、どうしたら儲かったのか儲からなかったのがよくわかるので今後の事業方針を考えるためにも自分で処理をすることのメリットは多いです。

本業に使える時間が短くてなってしまうという非常に大きなデメリットがありますが、税務署に並ぶ時間や無料牛丼に並ぶ時間、家から遠いスーパーの安売りには行ってしまう時間、激安品や無料品に並ぶ時間がある人は自力で勉強をして申告をしようとする努力が必要だと思います。

本業以外の無駄な時間が沢山あるのですから、その時間を会計処理や申告の勉強に使うべきです。

経営や申告も含めて事業なのです。作業だけをしたいのであれば独立せずに雇用されて社員として働くべきです。社員は嫌だけど経営や申告も嫌だからやらないということになると、やはり趣味であり遊びだと思います。

では本業に専念したいから申告など経理処理はしたくない人はどうすれば良いか、専門家に依頼すれば良いのです。

専門家に確定申告を依頼する場合

自分でやる時間がなく、やるのも嫌であるならお金を払って専門家に依頼しましょう。

自分でやっている仕事を考えればわかると思いますが、どの業種も安かろう悪かろうが原則です。会計事務所も激安は激安である理由があるのです。

激安の会計事務所はどうして激安なのかを書いた投稿です。
激安で確定申告をしてくれる会計事務所は本当に得なのか!の話

そしてこちらはまともな仕事をしてくれる会計事務所の見つけ方を書いた投稿です。
会計事務所の選び方!の話

両投稿共に会計事務所には書けないことを書きました。会計事務所以外でもこのようなことを書いている人はあまりいないと思います。しかしこれが真実なのです。

事業としてやるからには本業以外の手間のかかる仕事は有償で専門家に依頼できるくらい稼げないと話にならないと思います。今は無理であっても、無理な状態がダメな状態であるという認識を持てない人は事業なんてやらない方がいいです。

今後も専門家に頼まずに、支払いをせずに続けていきたいという考え方は事業をする人向けの考え方ではありません。本業で沢山稼ぎ、自分の専門外の仕事は有償で優秀な人に依頼して本業をさらに充実させていく。

個人事業主も会社経営であっても、このような思考は非常に重要です。確定申告時期の税務署に行ったことがある人にはわかると思いますが、その場にいる人が稼げそうな人に見えましたか?仕事を頼みたいと思えるような人はいましたか?そういうことなのです。

最初の方に書いた、税務署職員の返答が絶対に正しいわけではないということについてnoteに詳しく書いたことがあるのでリンクを張っておきます。税務署の返答が絶対であると勘違いしている人はぜひ読んでください。
税金のことは税務署に聞こう!はみんなが思っているほど正しくはないという話

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。