今日も前澤さんの1億円のお年玉の話です。
1億円の威力の凄さと使い方の上手さを感じました。会社からのプレゼントになると当選者に所得税が課税されてしまうので個人アカウントを使い、当選金額を100万円と高額ながら贈与税の非課税枠110万円以内にする。
前澤さんのツイッター1億円プレゼント祭!の話
昨日は100万円のお年玉、当選金の税法上の取扱いは上記のように贈与税の非課税110万円の範囲内なので非課税であると書きました。
この件で少しググってサイトを回ってきたのですが、9割以上のサイトが贈与税の対象と書いており、数%のサイトが所得税の一時所得に該当すると書いていました。
税法上の一般的な解釈はプレゼントやお年玉ということでしたら贈与税の対象、当選金とうことになると所得税の対象になります。
優秀な専門家が周囲に沢山いる前澤さんの行為なので、おそらく贈与税の対象となるという解釈が正解なのでしょう。しかし一般的にはこの行為は非常に微妙なので、税法解釈の考え方について書きます。
贈与税の対象とされる根拠
個人から財産をもらった場合は贈与税の対象となります。現金だけなく、車やマンションなどを個人が誰かにもらった時にもらった人に対して課される税金です。贈与税とはプレゼント税ということ!の話
個人から財産をもらっても贈与税がかからない場合があります。国税庁のサイトに贈与税がかからない場合の例が掲載されています。
贈与税がかからない場合
この中の8番に「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」という項目があります。
お年玉は年末年始の贈答に該当するので贈与税がかからないことになっています。
しかし贈与税がかからないためには「社会通念上相当と認められるもの」という条件があります。具体的にいくらまでのお年玉は大丈夫という定義はありませんが、一般的に考えてお年玉と呼べる金額であるかどうかということです。
100万円のお年玉、お金が沢山ある人達にとっては普通かもしれませんが一般的な人にとっては常識的な金額ではありません。「社会通念上相当と認められるもの」に該当しないと解釈するべきです。
従って、前澤さんの100万円のお年玉は贈与税の対象となると解釈することになります。
上記のようにプレゼントと解釈しても贈与税の対象、お年玉と解釈をしても贈与税の対象になります。
前澤さんからの100万円は贈与税の対象となりますが、110万円以内の贈与には贈与税はかからないことになっているので無税で100万円を受け取ることができます。
ZOZOTOWN新春セールが史上最速で取扱高100億円を先ほど突破!!日頃の感謝を込め、僕個人から100名様に100万円【総額1億円のお年玉】を現金でプレゼントします。応募方法は、僕をフォローいただいた上、このツイートをRTするだけ。受付は1/7まで。当選者には僕から直接DMします! #月に行くならお年玉 pic.twitter.com/cKQfPPbOI3
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) 2019年1月5日
前澤さんはこのことを狙ってツイート内にお年玉という言葉とプレゼントという言葉を入れたのだと思います。
所得税一時所得の対象なる場合
もう1つの考え方として所得税の一時所得に該当するという考え方があります。前澤さんからの100万円が所得税の一時所得に該当する場合はもらった100万円から50万円(特別控除額)を引き、2分の1にした金額25万円を給与所得など他の所得金額に足して所得税を支払うことになります。
収入が全くない人には税額0ですが、収入がある人は収入金額に応じて5%から45%の所得税と10%の住民税が課税されます。
所得税の税率
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。
(1)懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
(2)競馬や競輪の払戻金
(3)生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4)法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
国税庁の一時所得に関するサイト
個人である前澤さんからではなく、法人であるZOZOTOWNからのプレゼントやお年玉ということになると上記の4番、法人からの贈与に該当するので所得税の一時所得の対処になります。
このことを避けるために法人であるZOZOTOWNではなく、個人である前澤さんのアカウントを使い、前澤さんがプレゼントをするという形を取ったはずです。
1番に「懸賞や福引きの賞金品」という項目があります。懸賞に応募して賞金や賞品が当たった場合やショッピングモールや商店街などのガラガラで賞品が当たった場合は所得税一時所得の対象となります。
一時所得には50万円の特別控除があるので、1年間の当選金額合計額が50万円以内だと税金はかかりません。50万円を超えた場合には超えた金額の2分の1の金額に対して所得税と住民税がかかりす。
前澤さんはツイート内で抽選という言葉を使っていません。抽選という言葉を使うと懸賞の賞金である一時所得と解釈される可能性が高いので、そのことを避けるためだと思いますう。
しかし当選者という言葉を使っています。当選者という言葉は懸賞の賞金という解釈を導いてしまう言葉なので使うべき言葉ではなかったと思います。
他の言葉を使うのであれば選択者、決定者、気に入った人、プレゼントをしたくなった人、お年玉をあげたくなった人、このような言葉を使うことで一時所得と解釈される危険性が減ります。
当選者以外の言葉を使った方が安全でしたが、他の言葉はシックリこないですよね。おそらく当選者以外の言葉で検討したけど良い言葉がないので、危険を承知で当選者という言葉を使ったのだと思います。
贈与税なのか所得税なのか
前澤さんの周囲にいるとても優秀な税の専門家達が贈与税の対象との解釈で問題ない!との判断をしたので問題ない可能性が高いと思われがちです。ネット上では9割超のサイトで贈与税の対象で問題なしと書かれています。しかし当選者との言葉を使ってしまっているので完全にホワイトと言える状況ではありません。
税理士など有資格者はこの件についてほとんど書いていません。理由は事例を持っていないからです。今までこのようなことをした人がいないので、税務調査があった時に実際どのような取扱いをされるか誰もわからないのです。
この事例や判例がなく、税務調査があった場合にどのように取り扱いがされるかわからないという状況は仮想通貨の申告と全く同じです。
仮想通貨の億り人などは税当局に捕捉されてしまう、利益が出ている人はバレてしまう可能性が高い!と書いている記事や人が多かったですが、2017年に仮想通貨による収入があると判明したのはたった331人なんです。
税の世界はこんなものなのです。
誰と誰が贈与か当選金かを争うのか
前澤さんは払った人、プレゼントをした人なので関係ありません。争うことになるのは当選した人と税務当局ということになります。当選者に税務調査が入った場合、当選者が一時所得ではなく贈与税の対象であることを税務署に証明、論破する必要があります。
前澤さんからの当選連絡であるツイッターのダイレクトメール内には応募という言葉1回、当選という言葉が2回出てきます。
税務署に「応募をして当選したんですよね?」との質問に「はい」と答えたら一時所得ということを認めてしまうことになります。
「違います。お年玉です!」と言い切るしかないのですが、上手く逃れることができる人はいるのでしょうか。
ダイレクトメールの応募という言葉と当選という言葉、この言葉が専門家のチェックを受けていたのか疑問に感じています。応募とか当選とか当たるとか、懸賞や当選金のような解釈に持っていかれるような言葉は避けるべきでした。
当選をした人のほとんどがツイッターやブログなどで自慢報告をしていると思うので、かなりの人達が既に捕捉されていると思いますw
贈与税も所得税も今年2019年分の申告は来年2010年にすることになります。税務調査も2010年になってからです。
一時所得と認定されてしまった場合、100万円(当選金額)-50万円(特別控除)/2=25万円が他の所得金額に加算されることになります。
他に収入がない人は追徴税額0円、収入がある人は収入金額のより5%から45%の所得税と10%の住民税がかかります。
住民税は2.5万円、所得税は5%の場合は12,500円、45%の場合は112,500円になります。所得税と住民税合わせて最高で137,500円。
たった14万だけを取りに税務調査に入る可能性はほぼ0です。しかし当選したことを報告しているSNSを見ると、脱税している可能性があると感じられる人もいると思われます。
実際に脱税しているかどうかではなく、SNSを見てどういう印象を税務署に与えるかどうかが問題なのです。
最悪の場合であっても所得税と住民税合わせて14万円、所得税だけだと最大で11万円ちょっとを徴収するためだけに税務調査に入られる可能性は低いですが、この11万円をきっかけに他の怪しいことを調べたいという思いから税務調査に入られる可能性があります。
今のところ当選者が税金の心配をしている様子は皆無です。当選金に関係した税務調査に入られた場合は良いネタになるので何かしらの形でSNSに出てくると思います。
100万円が当たらなくて悔しい思いをしている私は、来年の秋から冬頃にかけて楽しいニュースが流れくることを楽しみにしています。
2019年1月12日追記
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者でもあり、公認会計士・税理士である山田真哉さんがユー中部にて前澤さんからの100万円の税法解釈について語っています。
前澤さんの100万円は贈与税の対象であり、110万円の非課税の範囲内だから課税されることはない。
しかし会社の忘年会で10万円が当たると110万円の贈与枠いっぱいになってしまい、その後に1万円が当たると、110万円を越える1万円に対して贈与税がかかるとのことです。
https://youtu.be/-99lDGjk4kE
私の聞き間違いでないか、確認してみてください。
前澤さんからの100万円の解釈は置いておいて、会社の忘年会で10万円が当たった場合は当選金か贈与を問わず贈与税の対象にはなりません。
会社の忘年会で10万円が当たった場合、当選金との解釈であっても贈与との解釈であっても所得税の一時所得に該当します。
これは100%所得税の一時所得であり、勘違いや間違いをしてしまうようなレベルの話ではありません。実務処理を少しでもしたことがある人なら間違えるはずのない内容です。
どうしてこのような発言になってしまったのか、非常に興味深いです。