2019年度税制改正で気になったこと!の話

税金
2019年の税制改正、いろいろな改正がありましたが私が気になったのは2つ。

仮想通貨などネット取引の個人情報紹介制度設置

仮想通貨などで利益を出した人を捕捉するために新たな制度ができることになりました。
国税当局が取引仲介業者に対して、申告漏れや脱税の疑いがある利用者を照会する制度が設けられることになりました。この制度が適用されるのは2020年からです。
照会できる情報は脱税目的が疑われる不自然な取引に限定されます。利益が1千万円を越えた可能性のある利用者が主な対象者となります。
これは逆に言うと2019年中は1千万円以上の利益があり、脱税の疑いのある口座を税当局が捕捉したとしても照会することができないということを意味しています。利益金額が1千万円未満の小口案件は今のところ全く捕捉できる方法がないという状況が続くということです。
直接捕捉をすることができなくても別件で税務調査があった場合はかなりの確率で仮想通貨の利益がバレることになります。バレてもバレなくても隠すことは脱税という重大な犯罪になるので隠さずに申告をするべきです。

仮想通貨利益の捕捉について適当な記事を書いていた人達

言いたいことはそこではなく、ビットコイン相場が200万円を越えた2017年から2018年初めにかけて、仮想通貨の利益は税当局にほぼ捕捉されてしまうと言う記事がサイトに溢れていました。
仮想通貨で利益を出した人の捕捉は非常に難しいと書いていたサイトは私のサイト以外はほぼない状態。いかに税務調査等の実態を知らない人がいい加減な記事を書いているかということです。
SNSなどで儲かったことを公言している有名な人、友達や知り合いに儲かったことを自慢してしまった人以外を直接捕捉することは現状は不可能なのです。
2017年中に仮想通過による収入があると判明した人は331人だけです。これしか捕捉をすることができないのです。これが現実です。
元国税職員である大村大次郎さんは下記のような記事を書いていました。

ビットコインほど、脱税がしにくい「金融商品」はないと言えます。
ビットコインは、所有者やその取引経緯がすべてデータに残されることになっています。国税当局としては、そのデータを収集すれば、現在の所有者が誰なのか、ビットコインでどのくらい儲かったのかというのは、一目瞭然なのです。寸分の誤差もなく、すべてを把握できるのです。

ビットコインは脱税し放題か?元国税職員が明かす仮想通貨の実態
ビットコインなどの仮想通貨の利益を隠して脱税をしている人に対して別件で税務調査が入った場合はこの通りのだと思います。不自然な入出金から仮想通貨取引をしていることがバレてしまいます。
しかし別件で税務調査が入らなければ、仮想通貨だけの利益を脱税していることを税当局が捕捉するのは無理なのです。大村さんはそのことをわかっていてわざとネタとして面白おかしく書いているのか、無知なのかはわかりません。
一般の人には面白おかしい記事となりますが、無知と捉えられる可能性があるこのような記事は書くべきではないと思います。
税に関する記事は無知とネタで溢れかえっています。
大村さんだけでなく、捕捉方法もわからずに仮想通貨の収入は全部掴まれている!などといい加減な記事を書いていた皆さん、謝りなさいw

支払調書提出義務は法制化されず

2019年も仮想通貨取引所に支払調書提出義務は課されませんでした。
支払調書とはその年に誰がいくらか儲かったのか損をしたかを記載された書類です。株の取引やFXの取引は取引所に支払調書提出義務があるので収益は全て税当局に捕捉されています。
株の場合は特定口座で源泉徴収ありにしておけば利益が出た場合であっても申告の必要はありませんが、FX取引の場合は利益が出た時は申告をする必要があります。
給与所得があり、FX取引での所得が20万以下であれば申告の必要がありませんがそれ以上の利益がある場合は申告して納税をする必要があります。
FXによる利益は完全に税当局の捕捉されています。1年間申告をしなくても連絡がこない場合がありますが、捕捉はされています。
2年から3年くらいは申告をしてくるかどうか様子見をすることも多いです。3年間利益が出続けて無申告を続けた場合、4年経過後に税務署から呼び出し通知が届き、3年分まとめて徴収されてしまうことになります。
支払調書が提出されるものに関しては完全に捕捉されているので期限内に申告をしないと罰金と延滞税(税金に対する利息)が無駄になってしまいます。
仮想通貨取引所にも早く支払調書提出を義務付けるべきです。金融庁の認可がおりている業者とそうでない業者、海外の取引所などがある関係で法制化が難しいのだと思います。
支払調書提出を義務付けさせずに捕捉するのは不可能なので、上手い案を考えてシッカリと捕捉して脱税者から徴収してください。

添付書類を省略

紙で所得税の確定申告書を提出する場合に源泉徴収票や配当金の支払通知書、特定口座年間取引報告書などを添付する必要がなくなります。
しかし添付をしなかった源泉徴収票などの書類は自宅で7年間保管する必要があります。
この改正、意味が全くわかりません。源泉徴収票を7年間自宅に置いておいたら紛失してしまう可能性が非常に高いです。
自宅に保管するより申告書に添付して提出してしまった方が圧倒的に楽であるにも関わらず、この改正。どのようなメリットがあるのでしょうか。税務署で書類保管をしたくないということなのでしょうか。
税務署も書類保管や管理をするのは嫌でしょうが自宅で税務書類保管するなんてもっと嫌です。自宅に置いておいたら絶対になくなります。わかっていての改正なのでしょう。
税務調査する気なくなってしまったのでしょうか。
2つめはおまけですが、今回の税制改正で気になったのはこの2点です。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。