会計事務所を変えても引き継ぎなんてないですよ!の話


会計事務所を別の事務所へ変える時の引き継ぎ作業、どのような引き継ぎがあると思いますか?

新旧の会計事務所同士が打ち合わせをして、今までの処理方法などを引き継いでいるというイメージや、引き継ぎ作業をすることが当たり前とのイメージがあるのではないでしょうか。

会計事務所を変更した場合の引き継ぎの真実

会計事務所同士の引き継ぎ、今の一般的な状況はわかりませんが私が会計事務所に勤務していた時は引き継ぎなどは一切ありませんでした。

引き継ぎがないどころか当時は旧会計事務所と連絡を取ったこともありませんでした。

逆に他の会計事務所へと移っていた時にも引き継ぎ作業や連絡を取り合ったこともありませんでした。

会社にある決算書や申告書や元帳を確認して今後の処理方法や処理方針を検討。

個人の場合は元帳などはないことが多いので、過去の確定申告書と決算書と帳票を確認してどう処理するかを考えていました。

会計事務所に頼んでいた会社や個人事業主にとっては新旧の会計事務所間で引き継ぎが行われないことはマイナスになってしまう部分が非常に大きいです。

旧会計事務所時代に行っていた処理を会社が完全に理解していれば、そのことを新会計事務所へ伝えるだけで済むので問題ないと思います。

しかしどのような処理をしていたかを会社が理解や把握できていることはほとんどないので、新会計事務所は1から会計処理や会計方針の検討をする必要があります。

この作業は非常に効率が悪く、会社にとって大きなダメージになってしまいます。

特に問題のない会社であっても会計事務所が会社の仕事内容や取引状況をしっかりと把握するまではかなり時間がかかります。

ちょっとした粉飾があって、何かしらの不正処理をしていた場合には会計事務所がその数字がおかしいことが粉飾等の影響なのか、単純な間違いなのかを判断するのは困難な場合が多いと思います。

会社にダメージがないように会計事務所移行をするためには新旧会計事務所がちょっとした引き継ぎ作業をすれば済むだけだと思いますし、会社としてはそうしてもらえることが当然と思っていると思います。

会計事務所の引き継ぎはノウハウのを無償で提供することになる

これを別業種に当てはめて考えてみると、A社がB社へP製品の製作を発注していましたが、今後はB社ではなくC社へ発注することにしました。

B社がC社へP製品の製作のノウハウを教えるかどうか、絶対教えるわけがありません。

A社が勝手にC社へと発注先を変えたのですから、A社とC社で今後のことを決めるべき事案であり、B社には全く関係のない話です。

A社かC社がB社に何かを求める場合には当然対価が必要になってきます。

通常はお金を払ってもノウハウを教えることはないと思います。

製造業や建設業、その他のほとんどの業界ではこのようなことは当たり前だと思います。

しかし、会計事務所に対してだけは引き継ぎがされることが当たり前だと思っている依頼者の割合が非常に高いと感じています。

新旧会計事務所の引き継ぎに関してググって税理士のサイトやブログを読みましたが、引き継ぎをされたりしたりしたことはないと書いていますが理由が曖昧。

客を奪った、奪われたとの感情から顔を合わせたくないことが理由なのでは、など感情的なことを書かれていたり、理由は説くに書いていないサイトとブログばかりでした。

会計事務所として考えると引き継ぎをしないことが不思議と感じるのかもしれませんが、他の業種に当てはめて考えてみれば当たり前のこと。

士業の人は自分が特別であるという認識が高過ぎとの印象を受けました。

会計事務所の変更は時間に余裕を持って計画的に行うべき

会計事務所を新しい事務所にする時は引き継ぎ作業がないので大きく処理方法や処理内容が変わってくることを覚悟して、十分に時間の余裕を持って移行すべきだと思います。

会社や新会計事務所が旧会計事務所に対価を支払って引き継ぎ作業をするということもできると思いますが、新会計事務所のプライドが許さないことが多く、引き継ぎ作業をしないと引き継ぐことができない新会計事務所への依頼は考え直した方が良いと思います。

会社の場合は法律の定めがある影響で元帳など、今までどのように処理をしてきたか確認や想像する書類が沢山ある場合が多いですが、個人事業主の場合は確定申告書と決算書しかないことが多いので旧会計事務所の会計処理方法がわからないことが多いと思います。

売上や費用が同じような2年であっても新旧会計事務所で税額が倍くらい変わってくることも珍しくありません。

会社と比べると個人事業主は規模が圧倒的に小さいことが多いですが、個人事業主の場合は会計事務所を変えた場合、全く今までの処理と変わってしまうこと、今までの処理を新会計事務所が把握、理解することは無理であることをわかったうえで会計事務所を変える必要があります。

会社であっても個人事業主であっても会計事務所を変える時は自分が仕事の発注先を変えるのと同じで、全く引き継ぎがなされることはないことをしっかりと認識して余裕を持って変えましょう。

そして個人事業主の場合は処理方法が変わる影響で税額が大きく変わる可能性が高いので年が明ける前に、できれば秋までには会計事務所の変更をして、しっかりと相談しておくべきだと思います。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。