会社が架空給与を支払うと税務署にバレるのか?の話


会社の利益が想定以上に大きくなり、支払う税金が多くなってしまいそうな時はいろいろと悪いことを考えたくなります。

誰かの名前を借りて給与を支払い費用を増やしてしまうとか。架空人件費ってやつです。誰かの奥さんや親戚、誰かの友達など実在の人を使ったり、存在しない架空の人に給与を支払ったことにしたり。

実際に働いていない人に給与を払ったことにして社長のポケットに入れてしまう架空人件費計上。このような悪質な行為をした場合、ばれるのかばれないのかを書いてみます。

会社の費用としての部分

会社がAさんBさんCさんの3人に20万円ずつ給与を支払った処理をして毎月60万円の費用処理、年間で720万円の費用処理をしても税務調査がこなければ何も問題なく時が流れてしまいます。

しかし架空人件費計上行為は非常に悪質な脱税行為なので、税務調査で発覚した場合は7年前までさかのぼって調査をされてしまうことになります。

年間720万円の架空人件費処理をしていた場合は7年分で約5千万円、この5千万円に対して40%の法人税2千万円。悪質な脱税行為なので重加算税が法人税2千万円に対して40%加算されます。

重加算税800万円が足されて2,800万円の税金を会社は支払うことになります。

さらに7年分5千万円の架空人件費は社長のポケットに入っているので社長に対して所得税や住民税がかかってきます。

税率は社長の給与金額によりますが、おそらく所得税と住民税合わせて50%くらいになると思います。5千万円に対して所得と住民税合わせて50%である2,500万円の税金がかかり、これにも40%の重加算税がかかり1,000万円が加算され3,500万円。

5,000万円の架空人件費計上という脱税行為が発覚してしまうと会社に2,800万円、社長個人に3,500万円、合計6,300万円が課税されてしまいます。
そして利息である延滞税の利率は14.6%とキャッシング並の高率です。5千万円の架空人件費計上をしていまったことで6千万円以上を支払うことになってしまいます。

架空人件費計上をしている会社は他にも悪質な脱税行為をしている可能性が高いので、架空人件費以外にも売上除外や架空外注費などもあるでしょう。税務調査を受けることで会社が破綻状態になってしまいます。

架空人件費を計上して脱税をする場合は会社の存続を賭ける覚悟が必要です。

税務調査が来た場合どうしてバレるのか

勤務実態がない人というのはすぐにバレてしまうことが多いです。タイムカードの打刻が不自然だったり、その人の費用の精算がなかったり、とにかく架空の人が関係している人が関わった仕事や書類がほとんどないことでバレてしまいます。

給与台帳だけを見ても、他の人には付いている手当が何も付いていなかったり、他の人からは控除している項目を控除していなかったりなどなど。どうしても実際にはいない人なので実在の人とは違ったことになってしまいます。

マイナンバーからバレてしまうと思っている人が多いと思いますが、会社は社員全員分の収入とマイナンバーを税務署に報告しているわけではないのでマイナンバーから架空人件費がバレてしまうことはないと思います。

そう思う理由は、マイナンバーが間違っているという問い合わせを聞いたことがないからです。膨大な量のマイナンバー処理をしているので、1人くらい間違えがあるはずです。

税務調査の時に存在の気配を感じられない人に対して疑問が生じ、そのような目で書類をさらに探ることで疑問が確信に変わり、反面調査をして架空人件費問題が発覚する。このような流れでバレていきます。

勤務実態のない実在する人への架空人件費ならともかく、実在しない人へ架空人件費処理をしていた場合、税務調査でその人の書類を確認されたり聞かれたりした時に平常心で対応できる人はいないと思います。平常心でなくなっていることに気付かれることでバレていくパターンも非常に多いです。

平常心でなくなった時の反応は表情がこわばったり、異常に汗をかいたり、言葉が上ずったり、一番多いので喋りすぎてしまうこと。やましい部分を聞かれると必要以上に喋りすぎてしまう人が多いので、その部分でバレてしまうことが多いです。

社長家族への給与

社長1人に給与を集中させると税率が高くなり、税金も高くなってしまうので奥さんや家族に分けて支給することがあります。

勤務実態のある奥さんや家族に給与を支払うことは問題ありませんが、勤務実態の家族に給与を支払う行為はやはり架空人件費計上ということになります。

社長と嫁の給料金額のバランス
会社によって仕事量や仕事の質などが違うのでケースバイケースではありますが、嫁が会社の経理処理などをほぼ全てやっているのであれば社長と嫁の給料の比率が2対1程度までは特に問題ありません。
所得税や住民税のことを考えると、1対1に近付ければ近付けるほど税金が安くなり、メリットも大きくなりますが2対1よりも1対1に近付ける場合は屁理屈ではなく、誰が聞いても納得ができる仕事状況の説明が必要です。税当局に媚びる必要は全くありませんが、他人が聞いて屁理屈と感じるような理由で給料設定をするのは避けるべきです。

会社が嫁に給料を払うことで節税できるのか?の話
以前にこのような投稿をしました。これは勤務実態があることが前提の内容です。全く会社経営や会社のことに関わっていなかったり、月に1度か2度程度しか出勤しなかったり会社の仕事をしていない状況の場合は上記の話は該当しません。

他社でフルタイムで働いている場合は完全にアウトですし、フルタイムでなくても他社である程度以上仕事をしていて、自社で仕事をする時間などない場合は奥さんへの給与は架空人件費に限りなく近い状態になってしまいます。

これは奥さんだけでなく、奥さん以外の家族に対する給与でも全く同じことが言えます。勤務実態がない人に給与を支払う行為は架空人件費計上行為、悪質な脱税行為です。

給与を家族で分けてしまう行為

150万円を社長1人に給与として支払うと税金が高くなるので、社長の給与を80万円にして全く会社の仕事に関わっていない嫁に40万円、親に30万円などと分けて支給することが当たり前で普通のように書かれていることがありますが、完全に脱税行為です。

税務調査の時は社長の家族の勤務実態を厳しくチェックされることがあります。実際に仕事をしていても勤務実態がないと疑われてしまうことがあるので、家族が本当に勤務しているということ、会社の仕事をしているという証拠を準備しておくべきです。

架空人件費計上は税務調査があった時にバレる可能性が高い行為であり、罰則も重いので非常にコストパフォーマンスの悪い行為です。絶対にやるべきではないと思います。

架空人件費などケチ臭いことせずにシッカリと税金を納めましょう。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。