保険料を払うことで節税できるのか?の話

保険
山田さん、箕輪さん、正田さんによる節税に関する対談サイトを読みました。
箕輪編集室を株式会社に!税金の悩みを解決する節税チーム誕生!?

真面目に真剣なことを書くと読んでいる人が離脱するので、ネタとしてかなりほどほど適当な感じで書かれているのだと思います。

これ読んだ人が起業してこのまま信じて行動することもないこともわかっています。

わかった上でネタとして面白いので、対談に出てくるキーワードについて1つずつ上から深く掘り下げて書いていきます。

保険に入って節税できるのか

節税とは何か?と言う話になりますが、納税額が減ることを節税と定義するのならば、費用にすることができる種類の保険に加入をすることで利益が減り、結果として納税額が少なくなるので節税になります。

この前、税理士の人に相談したら「2000万円くらい経費使わないと、かなり損しますよ」って言われて、とりあえず500万円の保険に入りました。
そのタイプが多いですね。ただし5年以内に引き出すとちょっとしか返ってこなくて、5~10年で引き出すと8~9割返ってくるタイプの。

とサイトに書かれていました。

おそらく年額500万円の保険であり、支払った保険料は全額費用にすることができます。

10年程度で解約をすると支払った保険料の8割から9割くらいが戻ってくる保険です。

何年後に解約すると返戻率が一番高くなるかは契約内容により設定が可能です。

しかし5年以上は契約を続けないと返戻率は高くなりません。

返戻率のことを考えると7年から10年後に解約することをターゲットにして契約をするのが一般的です。

いくら税金が安くなるのか

法人税等、会社の利益に対する税率はざっくりでかなり高めですが4割で計算すると毎年500万円×40%=200万円も税額を少なくすることができます。

200万円の節税ができることになります。

税額が安くなることだけを考えて損得を考えると得と言えると状態ですが、本当に得なのでしょうか。

保険に加入しない場合に500万円の利益が出る場合、保険に加入しないと税率40%と仮定した場合は上で計算をした通り500万円×40%=200万円の税金を支払うことになります。

これに対して500万円の保険に加入した場合は500万円の保険料を支払うことで利益が0になるので法人税等の支払額も0になります。

支払額だけで考えると、保険に加入した場合の支払額は500万円、加入しない場合は200万円です。

支払った保険料の9割が戻ってくるとうことを考慮すると、支払額が多くても保険料500万円を支払った方が得となるケースもあります。

しかし現預金に余裕がなく、借入が沢山あったり借入をして保険料を支払うということになると得とか損とかの前に資金繰りが行き詰まってしまいます。

長期間にわたり現預金に余裕がありそうな見通しであれば良いですが、資金繰りに不安がある場合の高額な保険契約は危険が伴います。

5年以内に解約をしてしまうと返戻率は非常に低くなってしまいます。

7年くらいは払い続けないと解約率が9割近くに達しないことが多いので資金負担はかなりのものになります。

今年、来年払うことができそうであっても5年後や7年後まで支払うことができるのか。

年額500万円ですと7年で3,500万円を支払うことになります。

3,500万円支払って解約することで9割(88%くらいまでの保険はありますが返戻率が9割超の保険は稀です)だった場合3,150万円が戻ってきます。

実質的には7年間で3,500万円-3,150万円=350万円の保険金支払いをすることになります。

年額50万円。この金額が高く感じるか安く感じるかは人それぞれだと思いますが、今このような仕組みで契約できる保険の内容は非常に現実的ではないクソ保険ばかりです。どうクソなのかは後述します。

保険を解約した時はどうなるのか

年額500万円、7年後の返戻率90%の保険を7年後に解約した場合500万×7年×90%=3,150万円が戻ってきます。

戻ってきた3,150万円は利益計上する必要があります。3,150万円×40%=1,260万円の税額を支払う必要があります。

保険料を支払って税額を減らす行為は利益を減らして税金を安くするのではなく、利益を数年先へ繰り延べるだけなのです。

7年後の解約時に返戻金に見合った3千万円程度の役員退職金支払い予定があれば、退職金を支払うことで会社の利益に対する税額がなくなります。

30年勤務の役員に3千万円の退職金を支払った場合。
・所得税 111万円
・住民税 75万円
・合計税額 186万円

退職金はいくらまで会社の費用にすることができるのか?の話

解約返戻金の利益はどうするのか

箕輪さんの話の場合は7年後や10年後に退職金を支払う予定はないと思うので、解約時の利益に対して税金がかかってしまいます。

当然何かしらの対応策があっての契約だと思いますが、最近は解約時の利益を吸収するために保険を利用する手法が増えています。

500万×7年×90%=3,150万円の解約返戻金を新しい保険の支払いに充て費用とすることで利益を消すという話です。

現時点では可能な話であっても5年後、7年後、10年後には税法が大きく改正されている可能性が高く、契約時のプラン通りの保険に入ろうとしても処理できない可能性が非常に高いです。

契約時のプラン通りの保険が7年後に費用として処理できない可能性は99%と言っても大げさではない状況です。

それにも関わらず「税法が変わってもそれに合わせて費用にできる保険が必ず開発されるはずだから大丈夫です!」と言い切る保険外交員や保険代理店が多いのです。

7年後や10年後には職を変えていて、責任など全く取る気も取ることもできないのに人の金だと思って好き勝手な提案をしてきます。

昨今の保険に対しての課税の厳しさ、今残っている全額費用にできる保険が異常なものしかないという状況を考えると、5年以上先に都合の良い保険が残っていない可能性が十分あると思います。全額費用になって返戻率が高い保険

普通の保険は支払った金額全額を費用にできて、解約返戻率が高い保険は今はありません。

あるのは下記のような異常な内容の保険です。年齢はほどほどの中年の人、金額は概算です。
・年間保険料 約300万円
・傷害死亡保険金 3億円
・死亡保険金 1年目250万円、2年目500万円、3年目800万円と続き、10年目2,600万円、そして11年目から死亡保険金が3億円

いろいろなパターンがあると思いますが、だいたいこんな感じの異常な保険です。

加入してから10年間は支払い保険料よりも死亡保険金の方が安いのです。

普通だったら絶対に入らないような内容の保険です。

10年目で解約をすると8割である2,400万円が戻ってきます。

3,000万円を支払って2,400万円の解約返戻金。

10年間の支払保険料は600万円。年額60万円。

実質的にはこれだけの負担額ですが、怪我以外で亡くなってしまった場合は支払保険料よりも死亡保険金の方が安いのです。

怪我で亡くなった場合は3億円の傷害死亡保険金が入りますが、10年以内に怪我で亡くなる可能性は非常に低いです。

そういった意味では保険内容には全く意味がなく、利益の繰り延べをするために意味がないものに600万円の実質負担をすることになります。

2,400万円の解約返戻時に退職金など、解約返戻金該当額を費用とすることができる何かがある場合は利益の繰り延べは非常に有効な節税になります。

しかし何も考えずに利益の繰り延べのためだけの意味のない保険契約は節税ではなくお金を捨てるだけの行為です。

お得なのは会社ではなく保険会社と保険代理店だけ。

紹介した税理士にも微々たる手数料という感じでしょう。

会社にとっては損するだけの保険に入っている会社、沢山あると思います。

利益を繰り延べたいだけであれいば民間の保険会社ではなく「経営セーフティ共済」という制度を使うべきです。

初年度は最大で460万円、2年目以降は最大で240万円、累計で800万円までしか費用にすることができませんが支払った金額は全額費用になり、契約から40ヶ月以上経過後は解約時に全額返金されます。

利息は付かず、返金額は全額利益になります。
会社や個人事業主が240万円を一気に費用計上する方法

対談サイトには8回程度のやり取りでサラッと書かれていて、会社経営をしている人も保険が本当に得なのかどうかわかっていない人が多いと思います。

サイトに詳細を書くと面倒で離脱されてしまうので、面白おかしく得する話だけが書かれたサイトが多いこともあり、保険料で節税!と言われていることの内容を理解している人は非常に少ないはずです。

会計事務所も説明が面倒だから詳細を説明することは少なく、保険代理店や保険外交員は契約を取るためには詳細は上手く隠しながら話すので、嘘は付きませんが上手い話し方で契約に誘導してくると思います。

保険を利用した利益繰り延べは悪なのか

契約する保険の内容、解約時の利益の処理方法、資金繰りへの影響など契約する保険に関して理解して加入する場合は非常にお得な制度です。

しかし現状は得をしているのは保険会社と保険代理店だけであり、会社は大きな損をしていることが多いです。

怠慢な会計事務所は保険代理店が多いことと、理解できない人が多いとわかっていて面白おかしく簡単そうに書かれいてるサイトが多いこと、理解せずに契約してしまう人、自分が賢いと思って契約してしまうことが多いこと。

おかしな保険契約が多くなっている理由はこんな感じでしょうか。

対談サイトネタ、次は社長の奥さんへの給料、役員報酬について書きます。批判ではなく、あちらもネタでしょうし、こちらもネタです。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。