内部留保という言葉を使わず記事を書くべき!の話


一時期ニュースやネット上で賑わっていた内部留保がなんたらとか留保金課税がなんたらとかの話。また最近少し盛り上がってきています。

内部留保も留保金課税も世の中の99%以上の人が理解できていなく、解説を読んでも8割以上の人が全く理解できないと思われる内部留保と留保金課税の話。

この言葉を使うと意識が高そうに感じられるので皆さん多用するのでしょうか。

私は内部留保とか留保金、留保金に課税と言っている人はアホだと感じますし、アホだと思います。

そもそも意味わかってない可能性が高いですし、意味がわかっていたとしたら人に説明する時には話す相手や記事を読む人にわかる言葉に置き換えて書くべきだと思います。

内部留保や留保金に対する課税との話はそれくらい難しく、一般的に理解されることがない言葉なのです。

内部留保とは

内部留保が意味することは抽象的なことであり、一言や二言で書くことができる事柄ではないのです。

中嶋よしふみさんのブログに内部留保について丁寧に書かれていますが、わかる人は読まなくてもわかりますし、わからない人はここまで丁寧にわかりやすく書かれていても全くわからないと思います。
https://toyokeizai.net/articles/-/193444

内部留保という言葉を使わず説明する

内部留保を取り崩して給与を上げろとの提言記事をよく見かけますが、内部留保という言葉を使わずに記事を書くべきです。

わかりやすく書くと、会社の利益を削って給料を上げて従業員に払えということです。

会社が利益を増やして法人税等を払う行為をせずに、従業員に給料を払って会社の利益を減らせということです。

内部留保という言葉を「会社の利益」に置き換えるだけでとてもわかりやすくなります。

これならほとんどの人に意味がわかると思います。

会社の利益を削って給料を払え、設備投資をしろ、費用をいっぱい使え、飲食もいっぱいしろ。

利益を削らないと、法人税を払った後に残っている利益にさらに税金をかけるという話が留保金課税です。

会社の利益イコール現預金ではないので、利益を使って今すぐに給料を増やしたり設備投資代金を支払ったりできるとは限りませんが、考え方としては内部留保との言葉が記事に出てきたら「会社の利益」と言葉を置き換えて読むことでほぼ意味が通じます。

会社の利益を使ってしまうべきなのか

このように会社の利益を使い、会社の利益を削って給料などの費用を増やすことは本当に良いことなのでしょうか。

会社経営の基本的理念は利潤の追求です。収入は大きく早く、支出は小さく遅くが基本です。

支出を大きく早くしろということになるので、会社経営の基本理念に反する行為をすることになります。

内部留保を取り崩してなんたら!と書くと正義っぽいですが、費用をいっぱい払って会社の利益を小さくしろ!と書くと賢いイメージではないですし、会社経営としてはするべき行為ではないことがすぐにわかってしまいます。

内部留保という言葉を記事に使う理由は賢い雰囲気を出したいから、論点をぼやかしたいから、具体的な方法を書くことを避けたいからなのだと感じます。

留保金課税を他の言葉に置き換えると

内部留保と同じように留保金課税を他の言葉に置き換えて説明を書いてみます。

会社設立から今までの利益の合計額から支払った配当金を引いた金額に対して課税をするということです。

正確にはもっと複雑な計算になるのですが、わかりやすく書くと今までの利益の合計額から配当として支払いをせずに残っている利益の累積額に税金をかけるということ。

課税されたくなければ、税額を減らしたければ利益を減らすしかありません。

この話も会社の利益を削って給料などの費用を払えという話につながり、利潤の追求とは逆の行為をすることになります。

内部留保取り崩しについて書く人

会社の利益は1円もなくていいから、利益が出た場合は全て従業員に分配しろ。

難しい言葉を使って偉そうなことを書いていますが、結局言いたいことや考えていることはこれなんです。

会社で働いている人達は会社の利益は自分たちのものだと思っている人が多いです。

だからその利益は会社に貯め込んでおかず、自分たちに払うべきである。

自分たちが作り出した利益なんだから会社の利益は自分たちが全てもらって当然と思っているのでしょう。

その考え方、全くわからないわけではありません。会社の利益はその会社で働いている人達の成果であることは間違いありません。

もちろん全て従業員だけが生み出した利益ではありませんが、考えた方としてはわかります。

しかしその考え方に基づき、会社の利益が大きい時は給料や賞与で従業員に支払って会社の利益を少なくしてしまったり0にしてしまった場合、会社が損失状態の時はどうすれば良いと考えているのでしょうか。

内部留保を取り崩せ、内部留保を増やすなということは会社に余力を残さないことになります。

永遠に利益が出続ければ問題ありませんが、損失が出た時は軽々危機に陥ってしまいます。

そんな時は給料が減る、賞与が減るだけでは済まず、損失を補えるだけの金額を従業員から徴収しても良いのでしょうか。

そんなことができるはずもなく、やはり会社は損失が出てしまった時のことも考えて利益を貯め込んでおく必要があるのです。

外部の人がこの利益を使って給料を払えということは非常識で無責任と感じます。経営状態が悪化した時の責任は誰が取るのでしょうか。

留保金課税導入のデメリット

内部留保に課税をする留保金課税、累積の利益金額の課税をするこの制度は会社の経営基盤を弱体化させます。

利益が全て現預金となって残っているわけではありません。

売上代金未回収状態の売掛金だったり、在庫になっていたり、機械などの設備になっていたり、新店舗の保証金になっていたり、現預金以外の形になっていることが多いです。

それにもかかわらず、利益の累積金額に課税されてしまうと税金を支払う現預金不足が懸念され、それどころか税金を支払うことができない会社も出てきます。

税金を支払うことができたとしても現預金が流出してしまい、会社の経営基盤は弱くなります。

会社はこんな不合理な税金は払いたくないと考えますので、利益を減らす方向で動いていくと思います。

しかし動く方向は給与ではなく配当金支出を増やす方向だと思います。

留保金課税を導入する際は配当金支出をさせずに、給与や設備投資で利益を減らさせる方向の法制定がなされるはずです。

しかしこの方向での法制定は理不尽極まりないものになる可能性が高く、日本で留保金課税が導入される可能性は極めて低いと思います。おそらくないでしょう。

そのことをわかっていてなのか、わからなくて書いているのか。内部留保取り崩しの話と留保金課税の話は経済ニュースのネタがなくなると定期的に沸き上がってきます。

内部留保の話題が多くなるのは上場企業の決算が全体的に良かった時です。

リーマンショック直後などはこのような話は全く出てきませんでした。

利益とか内部留保とか、それどころではありませんでした。

内部留保がなんたらとの記事に意味ある記事はほとんどありませんが、そんなニュースが流れている時というのは平和な時ということで、それはそれで良いのではないでしょうか。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。