小売店や飲食店などはサービス提供後すぐに現金で売上代金を回収することができますが、その他の業種では締日と入金日が決まっていて、売上代金は1ヶ月分ごとに後日入金されることになります。
普通の締日と入金日
月末締めの翌月末入金、月末締の翌々月末入金、月末締の翌々月10日入金など、取引先との力関係や商習慣により締日も入金日もまちまちになります。
手形による決済の場合は現金化できるのは決済日から3ヶ月から4ヶ月程度、建設業などでは現金化できる期日まで6ヶ月という手形もあります。
期日が3ヶ月から4ヶ月後の手形であっても仕事が完了してから現金化まで半年、期日まで6ヶ月での手形の場合は仕事が終わってから現金化まで8ヶ月程度かかってしまします。
仕入や外注費などは先払いになるので、長期間仕入金額や外注費など売上を得るためにかかった費用を立て替えることになります。
半年くらい先払いになてしまうことが多い会社経営ですが、会計処理は原則として仕事が完了した時点、相手に仕事の完成物を引き渡した時点で利益計上をする必要があります。
入金時期や入金されたかどうかは全く関係なく利益として処理をすることになります。
決められた入金日に売上代金が入金せずに遅れてしまった場合、どのような処理をすることができるのか、どのような対応をするべきなのか。
実はできることは限られていて、払わない者が得をして入金待ちの会社にとっては非常に厳しい現実があるのです。
入金がない時はどうなるのか
入金がなくても利益として処理した金額はそのままです。入金を促す交渉と説得をして、ひたすら入金を待つしか手段がないのです。
半年くらい入金が遅れても貸倒として費用にすることはできません。
ひたすら入金催促の交渉と入金を待つしかないのです。
貸倒れを損失として費用に落とすための条件
一般的には回収が難しくなった売掛債権(売上代金)や貸したお金は普通に貸倒損失として費用に落とせると思われていると思いますが、実は貸倒損失として費用に落とすことは非常に難しいことなのです。
相手が会社である場合
相手会社が会社更生法や和議、民事再生法申請、銀行取引停止処分や破産手続きになった時に半分だけ費用に落とすことができます。
このような法的な手続きが始まった場合であっても半分しか費用にすることができないのです。
それぞれの結果を受けた時にその結果に応じて残りの金額を費用に落とすことができます。
仕事が完了してから入金がされない期間を経て、回収できなかった金額を費用にすることができるまでは年単位で時間がかかってしまいます。
費用に落とすと言っても売上として利益に計上した金額を取り消すだけです。
支払いをしない会社が会社更生法などの手続きをしない場合はどうなるか、延々と費用にすることができず、売上を取り消すことができず入金の催促をして待つことしかできません。
相手が個人事業主の場合
相手が会社ではなく個人の場合はさらに悲惨です。
半分を費用に落とすことができる法的な手続きは自己破産しかなく、後は銀行取引停止処分になった時に半分を費用にすることができるだけ。
個人の場合はそのような手続きをせずに行方不明になってしまうことが多いので、個人事業主相手に売上代金が回収できない場合は1円も費用にすることができない、ということになります。
行方不明になっても貸倒損失として費用にすることはできないのです。
完全な行方不明の場合は費用計上可能ですが、何をもって完全な行方不明状態と言えるのか、判断が非常に難しく厳しいところです。
子供がいる場合は住民票を追えばわかりますし、日本で生きていくには住民票を移さないと生きにくい世の中です。
住民票を追うことで本人に辿り着くことはできますし、住民票を移していなくても絶対に行方を追うことができないということの証拠を用意することは極めて難しいことから、個人を相手に貸倒損失として費用に落とすことは事実上不可能な状態です。
貸倒損失として費用を落とす方法
入金が止まったしまった相手が、今まで継続的な取引があった場合は取引が1年以上の状態が続くと備忘価格(1円)を残して貸倒損失として費用にしても良いという通達があります。
下記サイトの3-1が該当します。
貸倒損失として処理できる場合
継続的な取引とは
ここで問題となってくるのは継続的な取引とはどの程度の取引かということです。
少なくてもその取引先との最初の取引の入金がない場合は継続的な取引とは言えません。
1年以上、毎月取引があった場合は問題なく継続的な取引と主張することができます。
半年だとちょっと弱いです。やはり1年以上の付き合いがあるかどうかというのが1つの目安になります。
貸倒損失に関してはお金を支払わない会社と裏取引をして、返済できないふりをして裏でお金を戻させるというインチキをする人が多いので、利益から減算したり費用計上することに対して非常に厳しい取扱いがなされています。
取引を開始して1番最初の代金が回収できなかった場合、永遠に貸倒損失として処理することができなくなります。
決算では貸倒損失として費用にして、税金の計算をする時に利益金額に加算して税額を計算することになります。
ここまでは売上に対する代金の貸倒れについて書きましたが、金銭を貸し付けた場合の貸倒損失はもっと条件が厳しいです。
相手が会社組織であり、破産手続きなど法的な手続きが開始されないと貸倒損失として処理をすることは事実上不可能な状態です。
貸倒というのは回収が滞った時に回収を諦めれば簡単に費用にできるイメージがあると思いますが、現実は費用に落とすことはできないと考えておく必要があります。
回収できなかった場合は費用にできないので、取引先はより慎重に選択するべきです。