社会保険行政の理不尽な過去と現在!の話

社会保険
少し前に社会保険にも調査があるという投稿をしました。
社会保険の調査ってありますよ!の話

社会保険の調査

この調査の話の続きです。調査は基本的に会社への訪問ではなく年金機構へ呼び出される形での調査となります。給与台帳、賃金台帳、出勤簿、源泉所得税納付書などの指定された書類を持って管轄の年金機構へ行くことになります。

隠蔽やインチキなどおかしなことをやっていなければ何も問題ないのですが、従業員の生活環境の都合で社会保険加入をしていない場合も多々あります。社会保険に加入したい、加入する意思がある従業員を会社の都合や会社が社会保険料を負担したくないからとの理由で社会保険に加入させないという状況をあぶり出し是正するというのが社会保険調査の一番の目的です。

社会保険に加入すべき人が本人の自己都合で社会保険に加入していない加入逃れの事業所をあぶり出す目的もありますが、実はそのことは最優先ではないのです。

しかし税務調査と同じで社会保険の調査も当たる職員によって天国と地獄のような対応の差があります。40代以上の職員の場合は現実的な対応をしてくれることが多いですが若い職員に当たってしまうと地獄です。規定通りにキッチリと面倒な処理を押しつけられてしまいます。

話の詳細を聞けばインチキや私腹を肥やすための行為ではないということはわかるはずなのですが、そのことが理解できないのか、理解できていても法令通りに処理することが正しいと思っているのか、法定通りに処理する以外の能力がないのか、全ての要素が混ざり合い、現実的ではない対応をされてしまいます。かなりの地獄モードです。

40代以上の職員が物わかりが良い理由

現実を知っているからと言うことだけではなく、過去の不正な処理や取引を知っているから甘いんです。まだ年金機構が社会保険庁と呼ばれていた頃、年金番号の管理がいい加減で誰の年金だかわからないものが沢山できてきて大問題になったあの頃です。年金問題が発覚するまでの社会保険庁の対応、知る人ぞ知る異常な世界でした。

会社には1人でも給与を支給している人がいれば社会保険加入が義務付けられていますが、数年前までは実質任意で自由な状態でした。年金機構(旧社会保険事務所)が給与支給会社を把握することが難しかったこともあり、把握したとしてもムリヤリ加入させるようなことはせず、ゆるゆるの状態が続いていました。

現在は会社設立をして、社長に給与支給をした場合は社会保険加入を逃れるのは非常に難しい状況になっています。昔とは厳しさの次元が違いますので、昔のことしか知らない人に社会保険加入は自由!という話を聞いて信じていると痛い目に合います。社会保険加入は絶対に逃れることはできません。

この件に関しては別投稿で詳しく書きました。
会社を作ると税金が安くなるというのは本当か?の話

社会保険事務所の不正

2006年に国民年金不正免除問題がありました。Wikipediaに動機などがいろいろ書かれていますが、どれも正しくないと思います。この時期は年金の滞納率が高いとマスコミに叩かれていた時期でした。動機は滞納率を下げたかっただけ。それだけだと思います。

私が知っている社会保険事務所の不正案件があります。会社が1千万円以上、社会保険料を滞納していました。社員から預かった社会保険料が500万円以上、その金額にほぼ同額である会社負担分を合わせて社会保険庁に支払いをしないといけない状況でした。細かい金額は書けませんが支払い義務があった金額は1千万円以上。

支払わなくてはいけなかった1千万円以上の社会保険料、2005年に社会保険事務所から支払い義務がないことの連絡がありました。ちょっとした書類に署名押印をして1千万円以上の社会保険料は支払わなくても良くなりました。

2005年から2006年にかけて社会保険料の滞納率が一気に下がっているはずです。社会保険料は会社が社員から徴収して、月末に会社負担分を足して支払うことになっているので原則として滞納がないものとして考えられています。

なので社会保険料の滞納率に関する資料を見つけることができませんでした。国民年金の納付率の資料は沢山あるのですが、社会保険料の納付率や滞納に関する資料は公表されていないか、深く見つけにくい場所にあるようです。

社会保険事務所不正の闇の深さと大きさ

私が知っているだけで1千万円以上の不正に納付義務をなくしてしまっているということは、全体でどれくらいの金額を不正に免除してしまったか、想像も付かないですし想像をしたくもありません。億や十億単位どころではなく、どうなんでしょう・・・全く桁の想像が付きません。

個人年金で働いている40代以上の職員は過去にこのような異常な不正が沢山あったことを知っているはずです。知っているからこそ社会保険の調査時も当たりは強くなく、無茶な要求はせずに現実的な対応をしてくれます。強く出てしまい、過去の不正に関する話を出せれてしまうことを恐れているはずです。

しかし20代や30代の職員は過去の不正については知らない人が大多数だと思います。若いということもあり現実的な対応ができないという能力不足な点もありますが、何よりも過去の不正を知らないので強気で言いたい放題の状態です。

過去の不正を知っている人とぶつかった時にどうなってしまうのか、ニュースになるくらいのおおごとになるのかどうか、興味津々ではあります。

各役所にもいろいろあるはず

社会保険事務所の不正については50代以上の税理士や労務士は知っている人が多いと思います。自分にとっても顧問先の会社にとっても社会保険事務所にとっても秘密にしておいた方が全員幸せなので、表沙汰にならずに10年以上経過しています。

今回書いたのは社会保険事務所の不正です。他の役所でも同程度の規模のいろいろなことがあるのではないでしょうか。いろいろな不正な処理、生きている間にどの程度表沙汰になり大ニュースになっていくのか、非常に興味深いです。表沙汰になってもらいたいような、永遠に表沙汰にならず闇に埋もれてもらいたい気持ちが入り交じっています。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。