ベビーシッター料金が経費にならない理由!の話

ベビーシッター

経沢香保子さんのこのツイートが流れてきました。確定申告時期ということもありベビーシッター料金以外のことも含めて書きます。

接待や飲食代

ベビーシッター料金の話の前にまずは接待と飲食代の話です。

「接待とか飲み代は経費になるのにベビーシッター料金は経費にならないのは不思議でおかしい」との文言、「ベビーシッター料金 費用」このような感じでググって表示されるサイトにお決まりのように書かれています。

こう思っている人は経費としている飲食代は仕事に関係していないということです。売上を増やすための行為ではない飲食代を経費として処理をしているのです。自分が行っている接待や飲み代は仕事に関係していないからこのような書き方になってしまうのです。

仕事関係の人と飲めば経費になるのか

売上を得るために直接関係する費用は経費として処理することができます。売上を得るためでない飲食代は取り引き先の人や仕事関係の人との飲食代であっても経費として処理をすることができません。という建前があるのです。

建前であっても税法で定められていることなので、意図的に売上を得るために直接関係していない飲食代を経費として処理する行為は脱税です。犯罪なのです。

脱税行為であっても無知が原因なのか、みんながしているから問題ないと思っているからなのか、実際に仕事とは関係のない飲食代を経費として処理していたり、そのことを堂々とツイートしたりブログに書いたりしています。

経費にするかどうかの判断基準が売上を得るために直接関係があるかどうかではなく、噂のように流れている情報で判断して、税法上問題があるかどうかは確認をしない。専門家にも相談をしない。

そんなことをしている人は飲食代以外も仕事に関係のない費用も経費として処理をしているでしょう。これが個人確定申告の現実です。ハッキリ言ってムチャクチャです。

仕事に関係のない飲食代を経費として処理している人が悪いとか、税の知識が乏しい人が多いということを批判したいわけではなく、そしてそのことが主題ではなく、税に対する認識や知識や関心が一般的にこの程度ということの例として書きました。

ベビーシッター料金が経費にならない理由

まず上記のように個人の確定申告をする人の税法知識レベルが低すぎることが大きな理由の1つであり、ベースになっていると思います。

詳細は後述しますが、私は個人事業の経費として処理するのではなく社会保険料控除や生命保険料控除のような所得控除としての処理を検討すべきだと思っています。

実額で計算するのではなく、一定条件を満たした場合に定額の所得控除をする方法。ベビーシッター料金に関してはこれ以外に方法はないと思います。

経費にできる条件設定が難しい

売上を得るために直接要した費用は経費として処理をすることができます。とても抽象的な言い回しであり、ハッキリ言ってどうしてそれが費用でこれが費用にならないのか、というものも沢山あります。

税法的な思考で考えた場合ベビーシッター料金に関しては、何をどう解釈しても売上を得るために直接要した費用ではありません。

子供を預けないと仕事に行くことができない、仕事をすることができない、だからベビーシッター料金は費用だと思う!という意見が多いです。

しかしその考え方だと食事をしないと仕事をすることができない、水を飲まないと仕事をすることができないなど全てのプライベートに関することが仕事と関係付けられてしまいます。

ここまで極端な話でなくても、ベビーシッター料金が費用になるなら保育園や幼稚園、学校の費用。ベビーシッター料金を経費にするべきと思っている人達はこの線引きをどうすれば良いと考えているのでしょうか。

ベビーシッター料金を経費にできるようになった場合、経費として処理をする人の多くは税法の知識に乏しく、専門家に依頼することなく申告をしてくるのでカオス状態になることは避けられません。

本当に仕事のために必要である人が適切な業者に適切な金額を支払い、その金額を経費として処理をするのでしたら検討の余地もあると思います。しかし現実は節税と脱税の区別がつかない人達が申告をするので、完全に経費として認めないが正解だと思います。

学校で教えるのが正解なのか、どうすれば良いのかは私にはわかりませんが、税に対する知識レベルを全体的に底上げしないと税法を変えていくのは難しいと思います。

ベビーシッター料金を経費にするための脱税指南サイト

子育ての経験がある人を、事務作業の名目でアルバイトとして雇って、子供の面倒も見てもらう。
そうすれば、実質はベビーシッター代なんですが、事務作業のアルバイト代として事業の経費にできます。
実態がベビーシッターだけしかやっていない方を、事務作業のアルバイトにすると嘘になります。
事務作業の合間に、子供の面倒も見ているって状態にするのがコツです。
家政婦を雇っても、事業の経費にできませんが、事務作業のアルバイトの方に、部屋の掃除をやってもらうことも可能です。

保育料、ベビーシッター代を、事業の経費にする裏技

これは「ベビーシッター代経費」でググルと1番上に表示されるサイトです。これは裏技とか節税ではなく完全に脱税です。脱税方法をこんなに堂々と裏技として紹介、推奨しているサイトは初めて見ました。

事務員として働いてもらっている人に子供の面倒を見てもらうこともあると思いますが、そのことをメインの目的として人を雇うケースはほとんどありません。

本当にベビーシッターをしてもらうために事務員を雇ったらかなり悪質な脱税です。このサイトに書かれていることは悪質な脱税指南だらけです。どうしてこんな犯罪サイトが野放しにあされているのが謎過ぎます。

書かれていることを信じてそのままやってしまい、税務調査が入った場合はとんでもないことになってしまいます。

この脱税指南サイトがいつなくなってしまうのか、チェックを続けていきたいと思っています。他にも悪質な脱税指南ネタが沢山あるので、サイトが消える前にまたネタとして使うつもりです。

ベビーシッター料金はどうすれば良いか

会社が従業員が負担すべきベビーシッター料金を支払った場合は経費として処理をすることができます。

経費にはなりますが現物給与として従業員に給与が支払われたことと同じ扱いになるので、従業員には所得税や住民税などが課税されてしまいます。

現物給与とならない場合もありますが、条件が厳しくて現実的には通常のケースは現物給与として課税されると考えた方が良いです。主題ではないのでこの件を知りたい人は自分でググってください。

このように会社は経費として処理をすることができても、ベビーシッターを利用している会社員は税負担をしているので個人事業主と同じ状態です。

このような処理になるので個人事業主がベビーシッター料金を費用処理ができてしまうと会社員との整合性がとれなくなります。

所得控除方式にすれば個人事業主だけでなくベビーシッターを利用している会社員も平等に恩恵を受けることができます。

ベビーシッター料金を個人事業の費用にできる日はこないと思いますが、所得控除方式であれば可能性はあると思います。

可能性はありますが財源だけの問題でなく、条件設定がかなり難しいです。業者や子供の年齢だけでなく配偶者の有無や配偶者の状況、同居している家族の有無や構成など。条件設定は非常に難航すると思います。

妻や夫が主婦や主夫をしていたり、親や親戚などが同居していて子供の面倒を見ることができる場合であっても控除対象にするかどうか。このような場合は控除対象としない場合はどのような条件にして、どのように状況確認をするか。

ベビーシッター料金を費用にしたり所得控除対象にしたりということを本気で考えるのであれば、具体的な条件設定を提言したり議論すべきです。
飲食は費用になるのにベビーシッター料金は費用にならない!と文句を言っていても考えていても何も変わりません。

考えるべきことは具体的な条件設定と運用案だと思います。今まで誰もこのようなことを提言したり議論していないので表立った動きにつながっていませんが、しっかりとした条件や運用案が議論されると状況が変わってくると思います。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。