鳥貴族が狙っているクラスタはどのクラスタなのか?の話

焼鳥店
鳥貴族が上場後初の赤字決算に陥りそうです。

焼鳥店チェーンの鳥貴族は8日、2019年7月期通期の単独最終損益が3億5600万円の赤字(前期は6億6200万円の黒字)になりそうだと発表した。従来は7億4700万円の黒字を見込んでいた。17年の値上げ以降、客離れが続いており、今期中に不採算店21カ所の閉鎖に伴う減損損失を計上する。同社の通期の最終赤字は14年の上場以来初めて。出店強化で1000店体制を目指す計画を取り下げ、戦略を立て直す。

鳥貴族、最終赤字に転落
書かれいてる記事の内容や4億円弱という赤字金額以上に鳥貴族の現状と先行きの見通しは暗くて危ういです。この状況になってしまった理由と過程と対応のひどさを考えると、近い内に業績が回復する可能性は極めて低いと思います。

今までも何度か鳥貴族の業績悪化のことを書いてきました。激安品が大好きなクラスタをターゲットにしたまま値上げをすることの愚かさと、値上げをしたことで違うクラスタと客層を入れ替える努力とチャレンジをしないことの愚かさについて書いてきました。

キャンペーンなどはいろいろやっていたようですが、根本的な考え方は激安品が大好きなクラスタをターゲットにしたまま無策で長期間放置してきたことが今回の事態を招いてしまいました。

業績悪化の原因

2017年10月から1品280円から298円へ18円、6.4%価格を上げたことがきっかけです。

激安店を28年間も続けてきてしまったツケなのだと思います。6.4%の値上げは値上げ幅としては大きいですが、280円が298円になっただけのこと。値上げ直前の客単価は2,110円だったので135円増えた2,245円になるだけです。
1品18円の値上げであっても、家族4人で行くと負担が大きいので家族での来店数が減っているとの報道もありますが、135円×4人で540円。大人2人と子供2人でしたら値上げの影響は300円から400円程度だと思います。

鳥貴族が1品18円の値上げで苦戦・この層を狙った商売に旨味はあるのか?の話

値上げをしたことが悪かったのではなく、1人あたり135円の値上げをしただけで店に来なくなるようなクラスタをターゲットにし続けていたことが原因です。

値上げ後もこのクラスタをターゲットにし続けることで業績が大きく悪化するということは過去の吉野家の状況を見れば明らかです。吉野家と同じことをして、同じように業績を悪化させてしまったのです。

吉野家は短期間で方針転換しましたが、鳥貴族は値上げをしたにもかかわらず激安品好きのクラスタをターゲットにしたままの状態を1年半も継続してしまいました。

値上げをした2017年10月から2019年2月まで、既存店売上高と客数は2017年12月の売上高以外は全ての月で前年同期と比べて減少しています。

6.4%の値上げをしましたが、客単価が前年同期比と比べて6.4%以上増加した月は1度もありません。それどころか2018年10月以降は客単価も前年同期と比べて減少しています。この状況は赤字がどうのよりも深刻で救いようのない状態を示唆しています。

月次報告(2019年2月度)
月次報告の売上高前年同月比の状況を見ると悲惨で救いない状況がよくわかり、このような状況になっているにもかかわらず抜本的な対策を取らない経営判断、異常なくらい呑気で対応が遅い経営方針検討と変更。

発表された経営方針の変更も具体的なことは不採算店を21店舗閉鎖することだけ。こんな呑気なことをやっている場合ではないことに全く気付いていないと思われます。
中期経営計画の取り下げに関するお知らせ

鳥貴族の今後の見通しと選択

選択肢はあまりありません。値下げをするか値上げをするか値段は現状維持にするか、味と店舗の質を上げるか下げるか現状維持にするか。大きな選択はこれだけです。

値段をどうするかと質をどうするかの組み合わせを選択するだけです。鳥貴族が2017年10月の値下げ以降に行ってきたことは値段も質も現状維持でした。その結果がこの悲惨な状況。

今のところ具体的な動きは発表された21店の不採算店の閉店、そして今後も不採算店をさらに閉店していくだけで値段も質も現状維持で客が戻ってくるのを待つだけの状況を続けようとしています。

1年半待っても来なくなった客が戻ってこないことに気付かず、今までお得意さんとしてきた客質が激安品にしか食い付いてこないクラスタであり、そのクラスタをターゲットにしていると悲惨なことになるということにまだ気が付いていないのです。

客層を100%近く入れ替えてしまう

目先ではなく、中期的なことを考えた場合は店舗の禁煙化が必須だと思います。そして焼鳥の質を上げることができるのであれば、さらに値上げをして客層をほぼ100%近く入れ替えてしまう。

鳥貴族の客離れは値下げをすることで解消するのか?の話
私は業績を回復させるためにはこれしかないと思っています。しかし今の鳥貴族にはその体力が残っているかどうか。

客層の大きな入れ替えをする場合にはマクドナルドの例の様に業績が回復するまでに2年程度、場合によってはもっと時間がかかってしまうことがあります。客層が入れ替わり中の期間は最低でも1年以上。

1年以上は業績が大きく悪化しても耐えられるだけの体力が残っていないと客層の大きな入れ替えは破綻リスクが大きくなります。

今の鳥貴族にその体力が残っているかどうか。今後しばらくは現状の経営方針を続けていくようなので、さらに体力がなくなっていくと思います。

本来であれば2018年10月から3ヶ月連続で客単価が前年同期を下回った時点で大きな方針転換をするべきですが、未だに現状維持に固執しています。

以前に鳥貴族のことをブログに書いた時は串カツ田中と鳥貴族の対比、鳥貴族の業績悪化後に串カツ田中方向に方針を変えて業績がどう変わっていくかを注目していました。

今は鳥貴族の壊滅的な業績悪化が本当に心配であり、そしてこのまま経営方針を変えなかった場合に破綻するかどうなのかが楽しみであったりもします。

今後も鳥貴族の経営方針と業績は要注目です。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。