複合機などのリース契約中の物件入れ替えリスク!の話

コピー機
車や機械や複合機などのリース契約、どのような物が対象であっても一度契約をしてしまうと解約をすることができません。解約は難しいと書かれていることが多いですが難しいのではなく解約や契約解除は不可能なのです。
解約には応じるが、違約金を支払うことになったという話を聞くことがあります。これは違約金と名前が変わっただけで残金を支払わされただけです。

リース契約の仕組み

リース契約は契約物件に料率を掛けて月額を計算します。500万円の車を5年契約60回払いでリース契約をした場合、500万円×料率に消費税を足した金額が月額となり、月額×60回が支払総額になります。

5年リースの場合の金利はどれくらいか

現在の5年リースの料率は1.8%くらいです。契約金額である500万円が消費税込みの金額として試算してみます。月額は500万円×1.8%=9万円です。支払い回数が60回なので9万円×60回=540万円になります。手数料、利息の金額は40万円です。
銀行から500万円を借り入れをして車を買い、5年で返済して利息総額が40万円だった場合の金利は3.1%になります。簡易的な計算をすると3.2%になりますが、毎月の支払額が毎月9万円になるような返済方法で計算すると3.1%になります。下記のようなサイトで簡単に試算できます。
ローン返済額試算サイト
5年リースの料率が1.9%場合の利率は5.3%、料率が2.0%の場合の利率は7.5%です。料率1.9%や2.0%は高すぎて話になりませんが、料率1.8%実質金利3.2%という数字を見てどう思いましたでしょうか。
事業用の資金を5年で借りて金利が3.2%、ものすごく高い金利です。リースの料率と金利の違いがわからずに1%台との話を聞いて飛びつく人も多いと思いますが、実質金利で考えるとリース契約は非常に手数料、金利が高い契約です。零細中小企業であっても5年間の借り入れは保証料込みで実質金利2%台前半で借りたいところです。
リース契約は支払い額が多くなりますがリース契約特有のメリットも多くあります。支払い額が多いですが他にメリットがあるのがリース契約なのです。リース契約のメリットの話は主題ではないのでまた別の機会に書きます。ここからが主題ですw

リース契約中の物件入れ替え詐欺

最初に書きましたがリース契約は一度契約をしてしまったら解約をすることができません。解約ができないにも関わらず、リース物件の入れ替えの提案をしてくる業者がいます。車のリースではあまり聞いたことありませんが、コピー機などの複合機のリース物件入れ替え案件は沢山ありました。これが主題ですw
リース物件入れ替え案件とは、「今支払っているコピー機のリース料より安い金額で新しいコピー機を使うことができます。今まで払っていたコピー機のリース料は今後支払う必要はありません。新しいコピー機の安いリース料だけ払えば大丈夫です!」という案件です。
200万円のコピー機を5年契約60回払いのリース契約をして料率が2.0%だった場合、毎月の支払い額は4万円です。3年経過時点の残金は200万円×2%(料率)×24回(2年)=96万円です。まだ契約が2年、残金が96万円残っている時点で、「今毎月払っているリース料4万円が3万円になります。安くなるだけではなく、コピー機が新品になります。」とA社の営業の人が飛び込んできます。
具体的には150万円のコピー機を5年契約60回払い、料率が2.0%で契約をさせるということです。150万円×2%=月額3万円、そして残金である96万円はコピー機を売ったA社がリース会社へ一括で支払うのです。

こんなことをしてA社は儲かるのか

いくらコピー機の利益率が異常なくらい良くても、150万円のコピー機を売って96万円のリース残金を支払って儲かるわけがありません。儲からないのにどうしてこのようなことをするのか、資金繰りが行き詰まっているからです。
A社とどのような契約をしても会社には残金96万円を支払う義務が残ります。96万円の残金をA社が当初のリース会社に支払うことで、元のリース料4万円の自動引き落としがストップして支払い義務がなくなります。
すぐに残金96万円を支払ってくれれば良いのですが、A社のように資金繰りに行き詰まっているとなかなか96万円を支払うことができなかったり、意図的に支払いを遅らせたりします。A社が96万円の残金を払うまでは毎月4万円ずつの旧リース料と3万円の新リース料を支払うことになります。A社はいろいろな言い訳をして残金支払いを先に引き延ばし、旧リース料の4万円を毎月振り込んで返金してきます。

リース契約中の物件入れ替え契約は最終的にどうなるのか

3ヶ月程度でA社が96万円の残金を支払ってくれればコピー機を新しい物に入れ替えただけの普通の取引ということになります。コピー機が新しくなり、月額は4万円から3万円に下がりましたが、コピー機が新しくなっても会社にとってメリットはほとんどなく、支払い期間と支払い総額が増えてしまっただけの大損取引なのですが、この契約をする人は大損をしたことにすら気付かないことが多いです。
半年くらい経過しても残金を払ってもらえない場合はダメになってしまうことが多いです。A社が倒産してしまうということです。倒産と言っても会社更生法など正規な処理の倒産ではなく、だいたい夜逃げですね。会社と連絡がつかなくなり終了です。
この場合は旧リース料の4万円と新リース料3万円の両方を会社が支払い続ける必要があります。旧リース物件のコピー機が手元に残っていれば、契約違反にはなりますが他社に安く又貸しをすることで小銭を稼ぐことができますが、新コピー機設置時に旧コピー機は撤去されているのでそんなこともできません。
さらに旧リース会社に旧コピー機が返されていない可能性もあります。A社が旧コピー機を他社に売ってしまっていた場合、旧リース料を支払うだけでなくコピー機を返還できなかったことに対する違約金を支払う必要があります。
このような契約を持ちかけてくる業者にまともな業者があるわけもなく、膨大な支払い義務を負ってしまうリスクが大きいだけでメリットは何もない、絶対にしてはいけない契約です。
リース契約中の物件入れ替えは契約前に相手が残金を支払ってくれた場合は乗って良いと思いますが、そうでない場合は絶対にやめましょう。
こちらが得をする話の場合は相手は損をしてしまうのです。相手が得をする話の場合はこちらが損をしてしまうのです。WIN-WINという言葉がありますが、営業が飛び込んできてこちらが得する話などあるはずがありません。
おいしい話が飛び込んできた時には、契約前にその契約をするということは何を意味するのかをしっかりと調べてからにしましょう。調べることができなのであれば、その契約はするべきではありません。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。