副業をする時は会社を設立すべし!の話

副業をしている会社員の人が増えています。将来の起業の準備、お小遣い稼ぎなど副業をしている理由は人により様々だと思います。

会社設立は手間も費用もかかり、会計処理や決算などのことを考えると大変そうです。個人事業主として副業をする方が楽なのでなりゆきで会社設立をせずに副業をしている人が大半だと思います。

副業を個人事業主としてすることのデメリットは後にして、今回は副業のために会社設立をしたい人が最低限必要な事項をサラッと書きます。会社を設立して副業をすることのメリットも後で書きます。

株式会社設立方法

株式会社設立費用

普通の方法で会社を設立する場合は下記の様に25万円かかります。
・定款認証手数料 50,000円
・印紙代 40,000円
・定款の謄本代 2,000円
・登録免許税 150,000円
・総額約 242,000円

電子定款認証をした場合は印紙代4万円がかからず、20万円程度で済みますが自分で全てをやる場合は普通に書類作成をした方がトラブル少なく会社設立ができると思います。

会社設立前の準備

商号決定(会社名決定)

まずは会社名を決める必要があります。副業でも事業でも1度スタートしてしまうと会社名変更は難しくなってしまうので慎重に決める必要がありますが、実は他社の会社名など取引先はほとんど気にしていないので、読みにくい会社名を避けて適当に決めてしまって良いと思います。
・漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット・アラビア数字と「&」「’」「,」「-」「.」「・」の記号は先頭と末尾以外に使用可能です。
・株式会社の文字を先頭か末尾に入れる。
・「支店」「支社」「出張所」「事業部」など会社組織の一部を示すような文言は使用できません。
・国や役所などの公的機関や銀行、生命保険の会社と誤認されるような文言は使用できません。
・東京ソニー、鳥貴族渋谷、ドラえもん横浜など有名会社や有名商標などの文言を使用することはできません。

本店住所の決定

・会社の本店所在地の住所を決定してください。
・自宅での仕事がメインとなる場合は自宅にするのがベストです。
・自宅住所を隠すためにバーチャルオフィスを借り、バーチャルオフィスを本店にしている会社が多いですが、株式会社の場合は社長である代表取締役の住所が謄本(全部事項証明書)に表示されてしまうのでバーチャルオフィスを利用するメリットはほぼないと考えておいてください。
・事務所を借りる場合は事務所住所でも大丈夫です。
・本店住所を自宅にした場合は自宅を引っ越した場合に本店住所の変更登記が必要になります。事務所を借りて事務所を本店所在地にしていた場合も事務所移転をした場合に本店移転登記が必要になります。本店移転登記にかかる登録免許税は3万円です。費用と手間がかかるので、なるべく移転が少ない場所を本店とするのが良いと思います。

資本金の額と1株当たりの額の決定

・資本金の額を決めてください。資本金とは個人が会社に出資する(お金の所有権が個人から会社へ移転)お金のことです。
・資本金は1円でも会社設立は可能です。資本金が1千万円を超える場合は会社設立初年度から消費税が課税されるので、特別な事情がない場合は1円から1千万円の間で決めるのが良いと思います。
・資本金の額により、銀行や取引先からの信用度が変わってきます。特に会社設立直後に創業資金の借入をする場合は資本金の額が多ければ多いほど有利です。ケースバイケースではありますが、創業資金としての借入金額の目安としては資本金の2倍です。資本金10万円であれば借入可能金額は20万円、資本金が100万円であれば借入可能金額は200万円です。
・1株当たりの額は資本金の額が100万円以上であれば5万円、100万円未満であれば1万円以下が適切だと思います。将来の増資や会社売却などを具体的に想定してる状況でなければ、適当な金額で大丈夫です。
・1株当たりの額は資本金が10万円以下であり、株主が自分1人であれば資本金の10分の1で良いと思います。株主が複数の場合は資本金の100分の1にしておくのが無難です。
・資本金の額についての考え方について書かれたサイトを1つご紹介致します。
https://sogyotecho.jp/shihonkin-chisiki/

取締役の決定

・取締役の人数と取締役を決めてください。取締役は1人でも問題ありません。副業をする場合は取締役は自分1人がベストだと思います。

会社の事業内容の決定

・会社の事業内容は登記事項になっています(会社の目的)。
・原則として会社の目的として登記した内容以外の事業をすることはできません。
・会社目的検索サービスサイトで仕事内容を検索してみることをオススメ致します。
http://mokuteki.jp/

決算月の決定

・会社の決算月を決めてください。
・税務申告と納税は決算月の2ヶ月後です。3月決算でしたら5月、8月決算でしたら10月が税務申告と納税の期限となります。
・税務申告月が忙しくない月を選択するのがベターです。
・会計事務所に申告を依頼する場合は会計事務所の繁忙期を避けるために1月、3月、9月、10月、11月決算を避けるのがベターです。

株式会社設立手続き

定款の作成

会社の基本的なルール、会社の憲法とも呼ばれている定款を作成する必要があります。下記の条件で作成した定款例をPDFファイルで掲載します。自由にコピペして使って頂いて問題ありませんが、間違いがあったことで公証人役場で怒られても責任は負いません。
・商号は株式会社いちか
・取締役は1名
・決算月は3月
・資本金は10万円
・1株当たりの金額は1万円
https://ichika.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/定款サンプル.pdf

定款の認証

定款を作成して押印が完了したら公証人役場に行き定款の認証(正規の書類、正しい書類であることを証明してもらう処理です)が必要です。

定款認証手数料50,000円と印紙代40,000円、定款謄本代2,000円、総額92,000円をこの時に支払います。

近くにある公証人役場は下記サイトで検索してください。
http://www.koshonin.gr.jp/list

代表者印作成

代表者印(会社の実印)を作成してください。会社設立登記に必要です。この時に銀行印と角印を同時に作成しておくのが良いと思います。

残念ながら日本ではハンコ社会が続いているので実印作成は必須です。

こだわりがなければはんこ屋さん21やアスクル程度の激安品で全く問題ありません。それ以上の激安品は質が悪すぎて印影がしっかりと出ずに困ることがあると思うので、激安品であってもはんこ屋さん21程度の価格までにしておいてください。

資本金払込先銀行選定

資本金を払い込む銀行を決めてください。事業規模にもよりますが、会社設立後の融資などのことを考えると都銀よりも地元の信用金庫がオススメです。地元で1番規模の大きい信用金庫が良いと思います。

資本金払い込み

選定した銀行へ資本金を払い込み、残高証明書を発行してもらってください。

登記書類作成

下記法人設立登記説明サイトを読んで理解できる人は自分で登記、全く意味がわからない人は諦めて最初から全て司法書士に依頼してしまうのが時間や手間、最終的にお金のことを考えても得だと思います。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252644.pdf

登記書類を法務局へ提出

登記書類を管轄の法務居へ提出します。
・登記書類提出日が会社設立日になります。
・登記書類提出日に登記完了日がわかります。
・登記完了日以降、設立した会社の全部事項証明書(謄本)と印鑑証明書が取得可能になります。

会社設立直後に必要なこと

税務署等への届出書提出

会社を設立したら下記の書類を提出する必要があります。

税務署への提出書類は下記の通りです。
・法人設立届出書
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/201602h001.pdf
・青色申告の承認申請書
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/ts050.pdf
・給与支払事務所等の開設届出書
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/2801h009.pdf
・源泉所得税の納金の特例の承認に関する届出書
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/2802h249.pdf

起業の場合は年金機構へ社会保険に関する書類を提出する必要がありますが、復業の場合は本業の給与から社会保険料が徴収されているので上記税務署への手続きだけで問題ありません。

銀行口座設立

会社名義の口座を設立してください。メインとして付き合いをするための地元の信用金庫、都銀、ネットバンク2口座、計4口座を準備しておくと使い勝手が良いです。

地元で1番大きな信用金庫、三井住友銀行、楽天銀行、ジャパンネット銀行の4行の口座開設をオススメします。

最近は法人口座開設のハードルが高くなっています。金融機関は犯罪などに使われる架空口座開設を極端に警戒しています。

金融機関に信用してもらうために、副業であっても口座開設時に国民生活金融公庫の創業計画書を作成して提出してください。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

副業であるので売上金額が少額であることが多いと思いますが、内容が正直でしっかりとしていれば問題なく法人口座を開設することができると思います。

法人クレジットカード作成

必須事項ではありませんが法人クレジットカードがあると何かと便利です。会社設立直後は審査が通らないこともありますがチャレンジはするべきです。

三井住友VISAカードを第一候補とし、アメックスとしんきんカード(JCB)のクレジットカード申請手続きを進めるのが良いと思います。三井住友VISAカードは審査が厳しいですがアメックスは法人カードの中でずば抜けて審査が緩く、次に緩いのがしんきんカードです。

個人事業主として副業をするメリットとデメリット

個人事業主として副業をするメリット

1番のメリットは会社設立の手間や会社の決算と申告の手間とコストがかからないことです。

自分で会社の決算と申告ができれば問題ありませんが、会計事務所などの専門家に依頼する場合は最低でも年額30万円程度はかかってしまいます。

激安でやってくれる会計事務所もありますが、この金額よりも安い会計事務所の質は疑ってかかった方が良いと思います。

1年や2年など期間限定で激安で請け負っている会計事務所もありますが、これは激安期間内に会社が成長して儲かる会社になっていることが前提、限定期間後は報酬が大きく増加することが前提となっています。

このことから起業準備の副業の場合は期間限定プランに乗ることに意味はありますが、小遣い稼ぎの感覚で数年後も同じ収益を想定している場合は期間限定プランを利用するのは難しいと思います。

コストや手間、全ての面倒臭いことを考えると副業は個人事業主としてやった方がメリットが多いです。

個人事業主として副業をするデメリット

個人で副業をした場合は下記3つの所得区分のどれかに分類されます。
・事業所得
・雑所得
・給与所得

ほとんどの人が事業所得であることを前提として副業をし、申告をすると思いますが判例等を元に考えると副業が事業所得に該当するケースはあまり多くありません。

事業所得にはメリットが沢山ありますので、当然事業所得と見なされるには厳しい条件が沢山あります。

副業をしている人にとっては上記3つの所得区分により処理が異なり、副業者に支払う事業者にとっては「事業所得者・雑所得者」への支払いは同じ処理になりますが、「給与所得者」の場合は処理が変わってきます。

給与所得者への支払いの場合は支払時に源泉所得税(給与支払時に差し引く所得税)を引く必要があります。

完全なる請負案件の仕事については給与であると指摘されることはありませんが、支払い金額の基準が時間や日数である場合は給与であると税当局に指摘される可能性が多々あります。

副業者へ支払う事業者としては個人に支払う場合は給与と認定されてしまうリスク(源泉所得税を徴収、納付する必要があるリスク)があり、会社経営者である副業者に対する支払いは源泉所得税リスクが0なので使い勝手が大きく変わってきます。

所得区分については今回のブログには書き切れないくらい奥深さがあるので、別の機会に詳細を書きます。

このように副業のために会社を設立することは手間とコストがかかりますが、副業者へ支払う事業者にとっては個人事業主に支払うより会社へ支払うことのメリットがかなり大きいという現実があります。

少額の小遣い稼ぎの副業でしたら会社にする必要はありませんが、一定以上の金額の副業をする場合や将来本業にする可能性がある場合は会社設立を検討してみてください。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。