相続放棄はみんなが思っているよりか複雑で難しい!の話

相続放棄
親が大借金持ちだった場合、相続放棄をしてしまいえば全てが簡単に解決してしまうと思っている人が多いと思います。

相続放棄をしてしまえば親の借金を支払う義務はなくなりますが、事はそう簡単ではありません。

その辺のブログなどによく書かれていますが、自分だけが相続放棄をしても他の相続人に借金が回ってしまうだけということになります。

亡くなった人の配偶者と子供。

この辺までは同時に相続放棄をすることが多いと思います。

この後は亡くなった人の親に借金が流れていきます。

亡くなった人の親ということは祖父母ということです。

年代にもよりますが親が亡くなる時は祖父母がすでに亡くなっている可能性が高く、生存している場合には連絡が取れていることも多いと思うので、生存している場合は祖父母も同時に相続放棄をすることができることが多いと思います。

問題はその先、親が相続放棄をすると借金は兄弟へと流れていきます。

親の兄弟ということは叔父、叔母ということになります。

無事全員が親の借金から逃れるためには相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に叔父と叔母まで全員相続放棄をする必要があります。

何を持って相続の開始があったことを知ったとみなすか、この部分は主題ではないのでググってください。

親戚が誰もいない人は別ですが通常は親戚と全員で相続放棄をしないと、相続放棄し損ねた親戚に全借金が流れてしまうということです。

ここまでの話は腐るくらい、いろいろなブログなどに書かれていることです。

相続放棄をするための準備

本題はここから。

相続放棄手続や対応は対象となる大借金主が亡くなってからスタートだと思っている人が大多数だと思いますが、実は亡くなってしまった時には手遅れになってしまっていることが多いんです。

100万円程度の借金でしたら、手続にミスがあり、その借金をかぶってしまうことになったとしてもどうにかなると思います。

しかし親の借金が数千万円以上や億以上など、かぶってしまうと人生が終わってしまうくらいの額である人は親の生存中、できれば癌など大きな病になる前、認知症など判断能力がなくなってしまう前に弁護士に相談しておくベきです。

それも無料相談ではなく、しっかりとお金を払って相談に乗ってもらうべきです。

相続後の制限

あまり知られていないことですが、親が亡くなって相続放棄をする場合、親が亡くなってしまうと借金、負債だけでなく財産も全て動かすことができなくなってしまいます。

この一文だけ読んでも何が問題になるのかよくわからないですよね。

賃貸物件

いろいろと問題があるのですが、まず親が賃貸物件に住んでいる場合、亡くなってしまってからは解約手続をすることができません。

解約ができなくても相続放棄をしてしまえば金銭的には困ることは何もありません。

生存中に家賃が溜まってしまっていたとしても相続放棄をしてしまえば支払義務がなくなるので1円も支払う必要はありません。

金銭的には困りませんが、人として気持ち良い状態ではありません。

大家さんとしても解約手続ができないという状態はかなり困ってしまう状態だと思います。

解約できないということは次の人を入居させることもできないのです。

部屋の中の家具や服や家電など、全ての物は親の財産です。

借金、負債だけでなく財産も動かすことも触ることもできなくなるので部屋を片付けて退去することもできません。

大家さんにとっては解約することもできず、部屋の荷物も片付けることもできず、にっちもさっちもいかない状態になってしまいます。

相続放棄をした子や親戚にとってはお金払わないので良い状態なので、金銭的な負担はありませんが、というか心苦しくなって払ってしまった場合は相続放棄がダメになってしまうので支払いをすることができません。

払わないで済むことで得しちゃった!と思える人は脳天気で幸せですが、滞納していた過去の家賃ではなく、親が亡くなってからの家賃も支払うことができず、片付けもすることもできない状態というのは普通の神経だとかなり良心が痛む状態だと思います。

親が事業主だった場合

親が個人事業をしていた場合はさらに状況は複雑になります。

事務所などの賃貸物件や取引先の売掛債権などや支払いの負債。

亡くなってしまってからは受け取ることも支払うこともできません。

親子で仕事をしていた場合、この状況は非常に心苦しく困ってしまう状況です。

親が亡くなってしまってからは預かっていた書類や商品などを返すことができなくなり、今まで支えてくれていた業者への支払い債権を支払うこともできなくなります。

親が亡くなってから相続放棄をすることを決めて、後の処理は全て成り行きにした場合、金銭的なことだけを考えると困ってしまうことはほぼないですが、心理的には人としてかなり苦しいと感じることが起きてしまいます。

親の生存中にやっておくべきこと

金銭的な損得抜きに気持ち良く相続放棄をするためには覚悟を決めて親の生存中に下記のことをやり遂げる必要があります。

まず一番大切なことは親の生存中に弁護士に相談しておくこと。

無料相談ではダメです。ちゃんと報酬を払って顧客となり状況を把握してもらい、的確な指示を受けましょう。

親の生存中でないとできないことがいっぱいあります。

だからこそ親が生存している時に報酬を支払って的確な指示を受ける必要があるんです。

この後の話は弁護士へ報酬を支払って相談をした場合に指示される話とかぶりますが。

まずは親の生存中に全ての賃貸物件は解約しましょう。

余命が延びた場合、戻る場所がなくなるという大きなリスクがありますが、1ヶ月は無理との話になった場合は賃貸契約の解除と家の中の大切な物の回収、そして廃棄処理の会社に依頼して部屋の片付けを生存中に済ませてしまう。

気分的には、親の生存中に戻る場所をなくして全て捨ててしまうことに大きな抵抗があると思いますが、これをするのとしない場合とでは後々の手間が大きく変わってきます。

親が個人事業をしていて、一緒に仕事をしている人は掛けはやめるべきです。

どのような業種であっても現金売上、現金支払いに徹するべきです。

それが無理な業種の場合は親が生存中に廃業してしまいましょう。

残念で辛いことではありますが相続放棄をする場合は対象者が生存中に辛いことをやり遂げるしかないんです。

それが辛くて嫌であれば借金も全て背負って頑張るべきだと思います。

相続放棄の手続や対策は親が亡くなってからでは遅いのです。

亡くなるまでにどれだけのことができるかが勝負なんです。

相続放棄を検討中の人は無料相談だけでなく、その後もしっかりと有料で相談に乗ってもらい指示をしてもらうべきです。

生存中に指示をくれない弁護士はクソです。

しっかりと指示をしてくれる弁護士を探しましょう。

この記事を書いた人

山口 健一

20年以上会計事務所で勤務し、20件以上の税務調査経験があります。

これだけの経験がある私だからこそ税理士との交渉をスムーズでわかりやすいものにするお手伝いをすることができます。

税務、法務、労務など会社経営に必要な全て業務知識を網羅しており、私が可能なことは私が対応をし、専門家に依頼すべきことは適切な専門家に依頼、仲介をすることができます。