2006年、平成18年に会社法が施行されたことで新たに有限会社を設立することができなくなり、これまであった有限会社は特例有限会社という名の株式会社として存続しています。
会社名に有限会社と表記されている会社は2006年以前に設立された会社であり、資本金が300万円以上の会社ということです。良くも悪くも10年以上継続している会社であり、資本金も1円や100円とかではなく300万円を最初に準備できる人が設立した会社です。
株式会社と比べた特例有限会社のメリット
役員の任期がないこと
株式会社の役員の任期は最長で10年ですが特例有限会社には役員の任期制限がありません。株式会社の場合は最低でも10年に1度役員変更(変更がない場合であっても)の登記をする必要がありますが、特例会社の場合は20年でも30年でも役員が変わらなければ登記をする必要がありません。
決算の公告をする必要がないこと
株式会社の場合は決算公告が義務付けられていますが、特例有限会社は広告の義務がありません。株式会社の場合は官報か新聞に決算公告をするか、WEB上で電子公告をする義務があります。資本金1円の株式会社であっても例外ではありません。
これは会社法が施行された当時会計事務所に勤務していた私にとっては非常に悩ましいことでした。どのような手段であっても公告を行うことは非常に手間も費用もかかり、さらに新法であるので公告をしなかった場合に本当に罰則があるのかどうかもわからない状態。
結果は予想通りで、公告しなくても罰則を受けることはほぼなく、現在も零細中小の株式会社は公告をしていない会社が大多数であり、今現在も公告をしなくても問題がない状態が続いています。
そんな状況であるので特例有限会社のメリットとして公告をしないでも良いというのは今のところない状態です。公告をしないことで罰則を受けてしまうかもしれないという心配をしないで済む!というがメリットいう状況です。
10年以上会社が存続していることと300万円以上の資本金で設立された会社であること
資本金1円でも会社設立ができる今と違い、会社法施行前は有限会社は300万円以上、株式会社の場合は最低でも1千万円以上の資本金が必要でした。
資本金の額や財務力がどうのという話ではなく、300万円を用意することもできない人が事業をすることに疑問を持っていました。300万円を用意することすらできないのなら普通にダラダラ働いていた方が良いのでは、と思っていました。
1円で会社を作ることに反対はしませんが、私は300万円くらいを用意できない人が事業はするべきではないと思っているので、新しい会社であればやる気や本気度、集金能力見るということも含めて取引先の資本金の額はとても気になります。
原価があまりかからない仕事であれば10万円程度、製造業や建設業などであれば100万円は資本金を用意するべきです。
株式会社と比べた特例有限会社のデメリット
信頼性や株式譲渡制限や取締役会などの組織に関すること書かれているサイトが多いですが実はその部分は実務上全く関係ありません。そのようなことを書いている人は実務経験者がない人だと思います。特例有限会社で困ることはそこではないのです。
特例有限会社の困ること
とにかく情報量が少ないのです。書かれている書籍も少ないですし、ネットに書かれていることも実務的には全く役に立たない中途半端なことばかりです。特に議事録に関する情報は極端に少ないです。
特例有限会社にとって取締役会を設置できないということは実務上デメリットになることはほぼないのですが、会社法施行後は取締役会のある株式会社を前提とした書籍が中心となってしまい、特例有限会社の場合の手続きについて書かれた書籍はほとんどありません。
ネットで検索しても正解が書かれているサイトを私は見つけることができませんでした。正しいことが書かれている書籍は税理士会館などの専門的な場所へ行かないと入手できない状態です。
役員退職金支給時
先日書いた役員退職金支給の話。
会社経営者が自分の退職金に1億円もらっても大丈夫?の話
株式会社が役員に退職金支給をする場合は次のような手順になります。
1 予め策定してある内規に従い、退職慰労金を退職役員に支給することを株主総会で決議をする。
2 その株主総会で退職慰労金の具体的な金額等の決定を取締役会に一任するとの決議をする。
3 取締役会で退職慰労金の具体的な金額や支給方法を代表取締役に一任するとの決議をする。
4 代表取締役が内規通りに具体的な退職慰労金の額等を決定する。
これが一般的な原則の株式会社の役員退職慰労金決議の流れになります。株主総会で取締役会に一任するとの決議をすることが原則となっています。
取締役会を設置することができない特例有限会社はどうすれば良いのでしょうか。ググっても抽象的な書き方をしているサイトはありますが、具体的な手続きを書いているサイトはほとんどありません。
このような手続きは司法書士に依頼してしまうことが多いので書かれているサイトがないのか、需要があまりにも少なすぎて書かれないのか、知っている人がほとんどいないのか。書かれていない理由はわかりませんが、結論は特例有限会社の場合は全て株主総会で決議をするのがベストのやり方です。
具体的な金額や支給方法も全て株主総会で決議してしまうのです。この方法がベストというよりも他の方法はないと思います。任意機関である取締役会を作り、取締役会で決めるという方法もありますが、支給額や支給方法などで税当局と後日揉める可能性を考えると株主総会で決議するのがベストであり、それ以外の方法は考えられません。
特例有限会社の様々な手続きについて、このような当たり前のことさえもネットには書かれておらず、書かれている書籍を探すのも難しい状況です。全て業者や士業の人に任せてしまえば良いと考えている人が多いと思いますがそこには大きな落とし穴があるかもしれません。
業者や士業の人であっても情報が入手しにくい状況になっているのです。何を信じるか、誰を信じるか非常に判断が難しい状況になっています。情報入手が難しくなっているので特例有限会社から株式会社に変えましょうという提案を受けた特例有限会社経営者も多いと思います。
このような提案は会社のことを考えた提案である可能性もありますが、実は特例有限会社に関する情報入手や手続きが面倒な状況になっているから組織変更を勧めるいるのかもしれません。
組織変更を勧められたり検討をする場合は必ず信頼できる専門家に相談してください。